大学でのいじめ防止の講義後、ある学生から「先生の学校ではいじめがなかったとおっしゃっていましたが本当ですか」と問われた。聞けばその学生は中学生の時にひどいいじめを受けたという。さらに学校で実施していたいじめ調査については「誰も本当のことは答えていない」とも言った。
神戸市や名古屋市など過去起きたいじめ事件の調査報告書に対する再調査の動きが最近目立っている。そこにはいじめを起こしてしまった学校や管轄する教育委員会に対する関係者の不信感が感じ取れる。言い換えれば、いじめの真相を明らかにすることの難しさがそこにある。いじめ調査で生徒たちが本当のことを書かないという先の学生の話はそのことを象徴している。
講義ではいじめ防止対策として追跡調査を含む年数回にわたるいじめ調査をはじめ教育相談週間や本人・保護者と担任との連絡帳を通してのやりとり、生徒・教員それぞれのソーシャルスキル・トレーニングの実施、時間講師も入れた全教職員による「気になる生徒カード」の作成・情報収集など常に生徒を見守る体制作りを中心に触れた。
SNSによる誹謗中傷の事例も紹介した。その際、事例が解決した一番の理由として生徒と教職員の信頼関係が成立していたことを挙げた。
信頼関係構築はいじめ対策の成果だけではない。授業も含めた普段の教職員と生徒との交流機会がその基盤となっている。当の学生はそういった学校が存在することを信じられなかったのだろう。いま子供たちにとって安心できる学校の存在が求められている。