コロナ禍が続く中で、新しい年になった。
身近な人に会えなくなって、年賀状で日頃の無沙汰をわびる人もいる。それは子供も同様だ。田舎の祖父母は孫からの年賀状の文字に、その成長を実感する。そこには、よき日本の文字文化が息づいてきた。
しかし、スマホの普及に伴い、年賀状を1通も書かない子供が激増している。同時に1通も受け取らない子供も増えている。
手紙やはがきを書く習慣が薄れて、大きな課題が表出した。
「住所を言えない子供」が増えているのである。
日本郵便の調査によると、2012年には小学6年生で84・5%が正しく言えた。これが21年では63・5%となっており、この10年間で約20%も低下しているというのだ。
小学校卒業段階で、約4割の子供が自宅の住所を言えない。中学3年生でも約2割が正しく言えないのである。
自宅の住所が正しく言えないとどうなるのか。日常生活で住所を書くときに困るばかりでなく、地域社会の一員としての意識が低下する。
それは、地域への愛着心の希薄さ、コミュニティーの劣化にもつながる。
また、災害や非常事態における広域避難で支障が出る。住所の言えない国民の増加は、わが国の安全保障上でも大きなリスクになる。
私は、日本郵便の主催する郵便教育推進委員長として、これまで学校での出前授業やはがきコンクールなど各種イベントに関わってきた。全国で多くの学校も参加してきた。各地域の郵便局長たちも努力してきた。
それでも、「住所を言えない子供」の増加は、食い止められなかった。そして、その割合は現在でも増加している。
このままでいいわけがない。私は次期学習指導要領で、例えば、小学校の国語3・4学年の「行事や案内のお礼の文章を書く活動など伝えたいことを書く活動」の留意点に「自宅の住所を書けるようにすること」という一文を付加していただきたいと強く願う。
社会科が先年、「47都道府県の位置と名称」の小学校卒業までの定着を明記して長年の課題に応えたように、国語でも同様のことを願う。
(全国連合小学校長会顧問)