(円卓)ESD関心層を広げる研修計画を

(円卓)ESD関心層を広げる研修計画を
【協賛企画】
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奈良教育大学教授 中澤静男

 2021年11月のCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)における岸田文雄首相の気候変動に関するスピーチをきっかけに、気候変動教育の実施が叫ばれている。

 また国際問題に関しては、ロシアによるウクライナ侵略と核兵器使用への懸念、台湾を巡る米中の対立と、今まさに人間社会の存続が危ぶまれる状況となっていると言っても過言ではない。

 このような状況の中、学習指導要領が「持続可能な社会の創り手となることができるよう」求めていることは首肯できる。しかし、学校現場を見る限り、「持続可能な社会の創り手」を育成しようという「熱」が感じられない。全国学力・学習状況調査が導入された頃には、どの教委も学力向上にまい進していたが、持続可能な社会の創り手の育成にまい進している教委はどれほどあるだろうか。

 23年2月17日に奈良教育大学を会場に「全国ESDコンソーシアム/ステークホルダー交流会2023」が開催された。全国各地でESDの推進に取り組むESDコンソーシアムおよびステークホルダーが集結し円卓会議を開催した。

 そこでもESDの広がりの弱さが話題となった。ESDに取り組む教員は、児童生徒の変容が「やりがい」となり、ますますESD実践に取り組んでいく傾向があるが、それは一部に限られており、ほとんどの教員のESDに対する関心が高いとは言えないというのが共通認識であった。

 22年12月に筆者は学校現場でのESD実践家であるESDティーチャーを対象にアンケート調査を実施した(回答者数:39人)。その中で「ESDに取り組む教員が増えない理由」を問うたところ、多忙感を理由とした回答数が多かった。その他には「ESDという言葉自体が日々の教育活動の中で登場するチャンスがSDGsなどに比べて相当少ない」「新たなことを+(プラス)で教えないといけないと感じられている」「管理職が理解していない」などといった意見が見られた。学校現場の忌憚(きたん)のない意見として受け止めたい。

 新年度を前に教委でも学校でも年間の研修計画を立案するタイミングであろう。ESDを実践することが学習指導要領の具現化に他ならないという理解のもと、ESD関心層を広げる研修計画を立てていただきたいものである。

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