文科省が昨年度から開始した小学校の教科担任制の実施状況を発表した。6年生の理科では公立小学校の65・4%が導入しており、同制度が始まる前の2018年度と比べ17・6ポイント上昇したとしている。文科省は引き続きこの制度を推進していくことを明言している。
小学校における教科担任制の推進は、教員不足に悩む各自治体にとって朗報と言えるかもしれない。4月の新年度早々から小学校では正規の教員が不足し配置できない自治体が続出している。東京都などは少人数指導の加配教員はおろか担任教員が80人も不足しているという。再任用教員による配置も追いつかない。学校教育の根底を揺るがす緊急事態と言ってもよい。
深刻化する小学校に比べ中学校は深刻な欠員状況ではないようだ。中学校教員を小学校の教科担任に配置することで本来の狙いのほか小学校教員の負担軽減にもつながるよう期待したい。ただしその場合、教員同士の研修は必須である。
筆者は校長時代、「小・中連携」のテーマで隣接する小学校と合同研修会を定期的に開催した。算数・数学、英語、生活指導のグループに分かれ小学校高学年から中学校への円滑な移行のためのカリキュラム作りと中学校教員による小学校への出前授業を実施した。その研修で中学校の教員は小学生の特性の理解や子供主体の授業形態の大切さを痛感した。
教員を配置すれば問題が解決できるという話ではないことは教委も校長も強く認識すべきだ。その点ではすでに先行実施している自治体の取り組みを参考にすることも必要だろう。