一時期「モンスターペアレント」という言葉が流行語となったように、学校、教育委員会などに理不尽な要求をする保護者の行動が注目を集めた。このような要求は、若手教員にも容赦なく向けられるもので、面接でもそれへの対応が問われることが少なくない。
学校に対して自己中心的ともいえる理不尽な要求をする一部の保護者対応に苦慮するケースがあり、各都道府県においては、教育機関などから「対応の手引き」や「事例集」などのさまざまな対応マニュアルが示されている。教員は、実際に起こった場合、適切に対応できるのか、そのための実践的な対応力を構築しておくことである。
このような要求については、教職員間の認識に甘さや温度差のあることが少なくない。「保護者や地域住民には学校に対して要求や苦情は、必ずある」との認識に立つことが重要だ。これが対応の基点となる。ここが不十分であると「そんな深刻な事態は想定できない」などと真剣に取り組む意識は生まれてこないものだ。
対応は、教員一人で行ってはならない。組織で対応することが肝要だ。そのために。自校で起きた事例をもとにした研修を行うことが学校に求められる。深刻に至らなかったものを含めればどんな学校でも事例は必ずある。そうすれば、生々しい、緊張感のある研修となる。
初期対応の心構えとしては、「耳を傾け、気持ちを聞き取ろうとする姿勢」「思い込みを排し、事実を正確に把握すること」「いつ、だれが、どのような対応をした、などの記録の取り方」などがあり、きめ細かな対応を教職員一人一人が行う必要がある。
一貫性に欠ける不統一な対応は、要求者に対して学校への不信感を増幅させ問題を深刻化、複雑化させかねない。前述の研修で対応力を付けたり、心構えを備えたりした心構えで、組織的な対応が求められる。慌てずに事実を正確に把握し、それに基づいて適切な対応方針を決めていく。複数の教職員による当該者との対応や児童生徒からの聞き取り、多様な調査など慎重に組織的に取り組み、客観的かつ正確な事実を把握しなくてはならない。
判断は主に管理職が行うが、その際、その訴えの内容が学校に対する「要望」なのか、「無理難題」なのかを判断しなくてはならない。要望であれば、それに対する誠意ある報告なり回答なり改善策を提示することとなる。無理難題であれば、学校では対応が不可能であることを説明する必要がある。また、教育委員会への報告とともに関係機関、弁護士や心理士に依頼や相談することも出てくる。その場合、担当を決め、しっかり記録を取り、場合によっては了解の上、録音も検討することが考えられる。教職員には毅然たる態度が求められる。
いずれにしても深刻化が予想された時は、正確な記録の蓄積と教職員間で事実や情報が共有されていることが組織的な対応を可能とする前提条件だ。
明らかな暴言や暴力を伴ったり、業務妨害など違法性のある行為があったりする場合は、警察などへの通報も考えられる。また、対応が困難と判断される場合は、早い段階で教育委員会への連絡、相談そして心理や法律の専門家である弁護士らから助言を得るなど外部との連携を念頭においた対応策を立て、先延ばしせず、先手を取るくらいの気持ちで組織的に対応することが必要である。
若手教員は抱え込まず、報告や相談などで情報共有を怠らず、管理職の判断や支持をもとに適切に対応しなくてはならない。