声の聴こえる防災教育 被災地と共に生きる人々から学ぶ

声の聴こえる防災教育 被災地と共に生きる人々から学ぶ
【協賛企画】
広 告

 編著者と同氏が勤務する早稲田大学の学生などが中心に行ってきた、東日本大震災の被災地での支援をまとめ、今現在求められる防災教育について提言した一冊だ。

 序盤は東日本大震災が発生してから現在に至るまで、編著者と学生がどのように歩んできたのかを記した年表を掲載。開催した講演会の内容に加えて、その間に起きた西日本大豪雨や新型コロナといった災厄を受けての活動も詳細に記す。また、全13回にわたった講演会内に登壇した、中学校長や漁師、映画監督といったさまざまな職種の人の発言も抜粋。多角的な視点から震災が残した爪痕の大きさ、言葉をつないでいくことの必要性を覚える。

 中盤からは講演会をともに支えたスタッフのエッセー、編著者と学生の対談、東日本大震災の被災者に対する取材など、あらゆる当事者の声が載る。放射能被害に遭った福島県で米農家を営む男性の話しは印象的。当時を振り返り、「あのまま、家や村に閉じこもってだけいたら、不安はどんどん大きくなって押し潰されていたかもしれません」と話しており、当事者だからこその言葉が心に重くのしかかる。

 本書では書名の通り、災害に見舞われた人たちの切実な「声」が紡がれており、災害をよりリアルに感じられるだろう。日本は自然災害大国と呼ばれており、自然災害対策は必要不可欠。その意識を高めるためにも、災害を風化させないためにも読んでおきたい。

広 告
広 告