【PBL授業実践ガイドー実践編(4)】誕生期前の授業デザイン

【PBL授業実践ガイドー実践編(4)】誕生期前の授業デザイン
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 児童生徒主体で進んでいくPBLは、ただ楽しいだけでは多くの学びを得ることができず、共に乗り越えたことのない境界を越えていく経験が大切です。その過程では経験したことのない困難が待っており、お互いを非難したり誰かのせいにしたりする状況も生まれます。そこで重要になるのが「グラウンドルール」の設定です。教室内が安心・安全な場であるということを、明示する必要があります。

 三田国際学園中学校・高等学校でPBLを実践している大野智久先生の実践例では、授業の最初に「変人になろう」というメッセージが示されます。大野先生のPBLの取り組みを取材した動画をぜひ参考になさってください。規範に沿った普通の取り組みを求めているのではないということを最初に提示することで、自分の偏った見方やメンバーの偏った見方を許容していくんだという雰囲気が醸成されるわけです。その一方で、何をやってもいいけれど、メンバーを非難したり傷付けたりすることは絶対に禁止であることも明示されます。

大野先生が授業の最初に掲げる「変人の図」
大野先生が授業の最初に掲げる「変人の図」

 また、PBLの導入期は、チームビルディングをする上でよく言われる「タックマンモデル」の混乱期に当たる事象がよく起きます。

 タックマンモデルでは、「形成期」「混乱期」「統一期」「機能期」「解散期」と、チームが成長していく過程をモデル化しています。児童生徒のチームも同じ過程を経てプロジェクトを進めていくことになります。チームができた当初はみんなでやろうという気持ちになるのですが、実は同じ方を向いていなかったり、漠然とした目標設定になっていたりして、「やりたいことが違う」などということがよく起きてしまいます。そうこうしているうちに「混乱期」に突入します。ここで共通目的を確認することができれば、お互いの相互理解が進み、より良いチームへと進化していくことになります。

 東京都立駒場高校の家庭科の授業でPBLを実践している木村裕美先生は、高校生のチームビルドを要素分解し、①=1人で考えて書く、②=2人で伝え合う、②-a=4人で取り組む、②-b=10人で取り組む、③=小さいプロジェクトにチャレンジする、という過程を経て、多様な価値観がある中で自分軸を持ってコミットしていくことを授業のさまざまな段階で学んでいくように仕組まれています。その大前提として、年間を通じてポジティブフィードバックを生徒同士で続けていくそうです。木村先生のインタビュー動画は本連載の第9回で紹介する予定です。

「今回の解説動画」大野先生の動画はこちら↓
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