【不登校】小中24万人で最多、9年連続増加 コロナ影響か

【不登校】小中24万人で最多、9年連続増加 コロナ影響か
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 小中学校の不登校児童生徒数が24万4940人と、前年度より4万8813人増えて過去最高となったことが10月27日、文科省の「2021年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」で明らかになった。不登校児童生徒数の増加は9年連続で、今回の増加率(対前年度)は過去最大。文科省はその背景として、コロナ禍の活動制限で登校意欲が低下しやすかったこと、臨時休校・再開が繰り返されたことで、登校のハードルが下がったり、生活リズムが乱れたりするケースがあったことなどを指摘している。

不登校児童生徒の55.0%が90日以上の欠席

 

 校種別に見ると、小学校が8万1498人(前年度6万3350人)、中学校が16万3442人(同13万2777人)と、いずれも急増した。1000人当たりに換算すると、小学校が13.0人(同10.0人)、中学校が50.0人(同40.9人)。小中学校の学年別に見ると、学年が上がるごとに不登校児童生徒数が増加しており、中3が5万8924人で最多となっている。

 

 不登校児童生徒のうち、90日以上欠席した者は13万4655人(55.0%)で、小学校が3万6010人(44.2%)、中学校が9万8645人(60.4%)。学校が確認した不登校の要因は、小中学校とも「無気力、不安」が最多(小中ともに49.7%)。小学校ではそれに「親子の関わり方」(13.2%)、「生活リズムの乱れ、あそび、非行」(13.1%)が続き、中学校では「生活リズムの乱れ、あそび、非行」(11.0%)、「いじめを除く友人関係をめぐる問題」(11.5%)となっている。

 また小中学校で、不登校や病気、経済的理由などによる長期欠席(年度間に30日以上)をした児童生徒の数は41万3750人(前年度28万7747人)だった。うち、新型コロナウイルスの感染回避によるものは5万9316人(同2万905人)と大幅に増加している。

文科省「多様な学びの場を増やす」

 文科省初等中等教育局児童生徒課の清重隆信課長はこうした不登校の要因について、「コロナ禍前の活動に戻っておらず、活動制限がある中、子供たちがストレスを感じたり、運動会や遠足、修学旅行といった、子供たちが楽しみにしている変化に富んだ活動が制限されたりといった理由で、登校意欲が下がってしまうということがあるようだ」と語る。

 また「新型コロナウイルスの感染拡大により、臨時休校や再開を繰り返したことによって、学校を休むことに対する抵抗が下がる、生活のリズムが乱れて取り戻せないという状況も生じている。同時に、コミュニケーションを取る機会が不十分になり、人間関係の形成がうまくいかないこともある」と指摘する。

 さらに、児童生徒課生徒指導室の小林雅彦室長によれば、2016年に制定された「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」(教育機会確保法)が浸透したことで、無理に登校させることなく、教育支援センターやフリースクールなどにつなぐ選択がしやすくなったことも背景にあるという。

 文科省は不登校児童生徒の支援の充実のため、不登校特例校の設置を進める、校内支援体制を充実させるといった取り組みのほか、自治体や民間団体などによる支援体制の整備を進めるとしている。また、来年度予算の概算要求では、いじめ・不登校対策のためのスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの重点配置を進めることを目指す。

 清重課長は「不登校対応は決定打に欠くところがあり、難しい。不登校の要因を特定し、なるべくそれに合った形で対応できればよいとは思うが、現に不登校になっている子供たちも多く、まずはその相談体制や、不登校特例校などの整備を進めることで、多様な学びの機会を少しずつ増やしていきたいと考えている」と述べた。

もっと子供たち自身に思いや考えを聞くべき

 文科省の「不登校に関する調査研究協力者会議」の委員を務めたこども教育宝仙大学こども教育学部の石川悦子教授は、今回の調査結果について「前年度から約5万人も増えた年はない。非常に重く受け止めている」と率直な感想を述べた。

 スクールカウンセラーとしても活動している石川教授は「不登校児童生徒が増えている実感は確かにある」と話し、その要因について「コロナ禍以前から体調不良や、なんとなく学校が苦手だという子が一定数いた。そうした子供たちがコロナ禍の一斉休校を経験したことで、生活リズムが崩れたり、気持ちの面でついていけなかったりしている。閉塞感が続く日々において心身の不調が回復せず、学校に通い続けるエネルギーが出てこないのではないか」と分析する。

 また、教育支援センターなど、各自治体で支援体制の整備が進んでいるが、一方でどこにもつながっていない児童生徒の割合が増えている。「受け皿の規模をどうしていくのか、そしてそこにつなげていくためにはどうすればいいのか。これだけの数になると、さまざまな側面から早急に検討していかなければならない」と警鐘を鳴らす。

 同調査において小中学校を合わせて不登校の要因で最も多かったのは「無気力、不安」(49.7%)だった。これについて石川教授は「不登校に関する調査研究協力者会議でも話題に上ったが、この『無気力、不安』はあまりにも大きなくくりだ。もう少しその中身を解明していかないと、子供たちの実態をつかむのは難しい」と指摘する。

 昨年10月に文科省から発表された、不登校を経験した小中学生に行った「不登校児童生徒の実態調査」では、不登校の最初のきっかけとして、「先生のこと(先生と合わなかった、先生が怖かったなど)」(小学校29.7%、中学校27.5%)、「身体の不調(学校に行こうとするとおなかが痛くなったなど)」(小学校26.5%、中学校32.6%)、「生活リズムの乱れ(朝起きられなかったなど)」(小学校25.7%、中学校25.5%)、「友達のこと(嫌がらせやいじめ)」(小学校25.2%、中学校25.5%)が比較的高い割合を占めていた。

 石川教授は「子供たちへの調査と学校側への調査結果では、かなりズレがある。今後、拡充していくべき支援についても、子供たち自身が本当はどのような支援を求めているのか、子供たちの思いをつまびらかにしながら考えていく必要がある」と強調した。

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