男女交際を禁止する校則に違反したとして自主退学させられたのは不当だとして、堀越高校の元女子生徒が同校を運営する学校法人「堀越学園」に対して約700万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁(村田一広裁判長)は11月30日、学園側に約98万円の賠償を命じる判決を言い渡した。村田裁判長は校則を有効とする一方で、学園側に「教育的指導を経ることなく、自主退学を勧告したのは社会通念上、著しく妥当性を欠く」などとして、退学勧告の違法性を認定した。
判決によると、同校の校則では「特定の男女間の交際は禁止する」とされており、校長は「学校の秩序を乱し、生徒としての本分に反した者」に対して退学を命ずることのできる規定が設けられている。
2019年11月、元女子生徒が同学年の男子生徒と交際していたことを理由として、校則に基づいて学校長が自主退学勧告を決定。勧告を受けた元女子生徒は退学し、その後、他校に編入した上で大学に進学した。
裁判では、元女子生徒は男女交際を一律に禁止する校則は社会通念上、不合理で公序良俗に反し無効であるので、自主退学勧告は違法と主張。学園側は、校則は「男女交際によって精神的・肉体的な痛手を受けることを未然に防止し、生徒の健全な育成を図り、適切な自己決定ができる資質や能力を育成しつつ学業等に専念する時間を確保することを目的とする」として、合理性があり無効ではないと反論していた。
判決で村田裁判長は、同校が「教育方針として生活指導に力を入れていることをうたっており、入学希望者とその保護者に対して男女交際の禁止を含め、独自の教育的見解と指導方法で生活指導にあたることを説明している」と指摘。「心身の発展途上の段階にある高校生にとって、男女交際が生活習慣の乱れの要因になり得ること自体は否定できず、同校の教育理念や教育方針に鑑みれば、男女交際の禁止により生徒を学業等に専念させるためのものとして、社会通念に照らして合理的といえる」として同校の校則を有効と判断した。
一方、元女子生徒の男女交際は親しい友人のみに認知され、他の生徒に動揺を与えるものではなく、元女子生徒の生活ぶりも良好だったことなどから、学外に排除することが教育上やむを得ない状況にあったとは言えないと指摘。「教育的指導を経ることなく、考慮すべき事情を考慮せず、社会通念上、著しく妥当を欠いており、勧告は教育上の裁量の範囲を超え違法」と判断した。
判決を受け、堀越高校の掛本寿雄校長は「あくまでも生徒を守るための校則であり、人を好きになる気持ちを否定するものではない。今後のことは判決文を精査した上で検討したい」と話している。