前回は本校(大日向中学校)の「ワールドオリエンテーション」(イエナプラン教育のハート)の取り組みについて説明しました。今回は、イエナプラン教育のもう一つの特徴である「ブロックアワー」(以下、BH)について説明します。
イエナプラン教育では、午前中にブロック(かたまり)のアワー(時間)をつくります。50分授業ではなく、例えば100分の枠を「かたまり」として取ります。そして100分の使い方は生徒に委ねられ、生徒は1週間の予定表に計画を書き込んで遂行していきます。
生徒たちは、与えられた課題(基本は数学と英語と漢字、以前は国語、社会、理科も)や「ワールドオリエンテーション」の自己課題などに取り組みます。1週間単位で全ての教科の課題が達成できれば、その日の100分全てを英語に費やしてもいいですし、50分ずつ英語と数学を学習してもいいのです。
複数教科の課題がありますが、それらにどの順番で取り組むかは、生徒が各自の週計画に従って自分で決めます。ただし、いきなり課題に取り組むことはできませんので、「インストラクション」と呼ばれる15~20分程度のミニ授業を先に受けます。
そして1週間でどこまで達成できたかをチェックし、教員に報告します。自分で判断して、自分のペースで課題に取り組み、成果を報告するわけですから社会人と同じです。そこで基礎学習に取り組むことをイエナプラン教育では「仕事」と呼んでいます。なお、国語、社会、理科については、現在は1週間単位ではなく、例えば10時間相当をかけて取り組み3週間後に課題を提出するというような形態の「プロジェクト」という課題解決型の学習を行っています。
このBHは、現在「令和の日本型学校教育」で求められている、個別最適な学びと協働的な学びが融合した時間だと言えます。「個別最適な学び」で言えば、生徒が主体的に自己選択をして、自由進度で学習する形で遂行されるからです。中2の生徒が中3の数学に取り組んでいることもありますし、その逆もあります。「協働的な学び」で言えば、生徒が分からないことがあるときに、近くにいる詳しい生徒に聞くという行為が日常的に行われているからです。そうした学びは、そのことを既に学習している上の学年の生徒が隣にいることで可能となるのです。
このような学びは、本校で大切にしている3つのことに照らせば「自立すること」「共に生きること」の両方に関わる教育活動です。常に主体的に学ぶことが求められる時間ですから、自立と自律を促す学習形態です。受動的に行動する性向の強い生徒にとって、本校の学びはつらいと思います。ある生徒は筆者にこう言いました。
「自由って大変ですね。責任がありますから」