【イエナプランの中学校(8)】自由をどう考えるか

【イエナプランの中学校(8)】自由をどう考えるか
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 本連載の第1回で、本校(大日向中学校)には校則や制服がないことを述べました。その点も含め、生徒の自由を最大限保障している学校です。では、なんでもかんでも自分の思いのままに、わがままに振る舞ってよいということでしょうか。そうではありません。「自由は他の人の自由を奪わない範囲で保障される」という考え方を基底にしています。もし、自分の自由と誰かの自由とが対立した場合には、対話によって解決することが求められるのです。以前、ある生徒が「ブロックアワー」の時間に「BGMを聴きながら学習したい」と言って音楽を流し始めたのですが、別の生徒がそれは困るとヘッドフォンで聞くように促したのはその一例です。

2クラス合同のサークル対話での話し合い

 本校では、大切にしている3つのことの一つに「自立する」を掲げており、生徒が自分で考えて行動できることを目指しています。学習面では、課題達成のためのスケジュールを自分で立て、第6回で紹介した「ブロックアワー」では自分で今やるべき課題(教科)を選択し、自分のペースで学習することができます(自由選択・自由進度の学習)。同様に生活面では、可能な限り自由でお互いに居心地の良い空間になるように生徒同士が配慮し合っています。本校で大切にしている「共に生きる」がセットになっているわけです。

 このようなことから、筆者は昨年本校に着任した際に「生徒を大人扱いする学校」だと感じました。前職は大学教授でしたが、大学生と接するのと同じ言葉遣いで生徒に話し掛け、会話をしています。筆者にとって居心地の良い学校です。

 しかし、現実にはこの生徒指導の取り組みは大変なことも多くあります。一例を挙げると、昨年、生徒のスマホの扱いについて、かなり問題のある状況になったことがありました。教職員で話し合った結果、大人の側が一方的に規制するのではなく、生徒たちに考えてもらおうということになり、大人側の課題意識を投げ掛けました。

 生徒との話し合いを通して分かったことは、扱いに問題のある生徒の全員が自分でも悪いと分かっている(自覚している)ということでした。では、どのようにしていくのか。自分たちのスマホに対する意識を再度確認して行動していこうということになりました。初めての校則ができるかもしれない状況でしたが、今のところはないままで済んでいます。生徒と教職員がしっかりと向き合い、対話を通して課題解決を図ることで、共に創る学校を形成していると感じました。ちなみに今年度は、1学期に保護者にもスマホの問題を投げ掛けて一緒に考えてもらう機会を持ちました。

 このように、自由と自立と自律は、本校では生徒指導面のキーワードになっています。

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