前回は本校(大日向中学校)の生徒指導面の特徴を「自由をどう考えるか」と題して述べました。既に読者の方々には、イエナプラン教育を行う本校が自立した市民像を描いて教育を実践していることがお分かりいただけたことでしょう。そこで今回は「自治を育てる」と題して、シティズンシップ教育としてのイエナプランの特徴を特別活動の視点から説明します。
「自立する」「共に生きる」「世界に目を向ける」の3つを大切にしている本校では、自分たちで責任を持って行動し、協働して物事に取り組むことで、より良い世界を創造していく市民を育成しています。ここには市民性(シティズンシップ)を育成するという理念が込められています。その根幹を成すのが自治の考え方で、力を入れていきたい実践です。
例えば今年度の1学期には、生徒会の役員を決めるプロセスも生徒たちに考えさせました。生徒はなぜ生徒会が必要なのか、役員をどのように選ぶのかを考え、生徒会長選挙を実施しました。会長、副会長、書記、会計の4人組で立候補するのか、会長のみ選挙で選出し、残りの3人を指名するのかという議論になったのですが、どちらにも良さがあると考え、折衷案として会長立候補者は1人でもよいし、残りの役割の候補者と2~4人で一緒に立候補してもよいという仕組みになりました。決め方を決めるという難易度の高い議論でしたが、真面目に議論に参加している生徒の姿が印象的でした。
ちょうどその時間中に早退する予定の生徒がいたので、教員が声を掛けたところ「帰りたくない、まだ話し合いたい」と主張するほどです。結局、選挙は会長候補1人で立候補した生徒と、会長・副会長候補ペアで立候補した生徒たちの一騎打ちになりました。
こうした自治の取り組みを通して集団づくりを活性化させることで、特別活動の目標である人間関係形成、社会参画、自己実現の資質・能力を育成することができます。「自分たち」意識を持って、相互に助け合う関係性ができれば、協働的な学びを充実させることができるので、学習面への効果もあります。さらには教職員が生徒の個別的な支援に注ぐ負担を緩和することもできます。
学校は生徒が集団生活をする場ですから、集団の力を高め、個を生かすことは重要です。この「個と集団の関係」を基盤にして自治の力を育む特別活動の機能を向上させることで、シティズンシップ教育としてのイエナプランを実践していきたいと考えています。