【教師の仕事をデザインする(10)】 先生としての自分と本来の自分

【教師の仕事をデザインする(10)】 先生としての自分と本来の自分
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 全10回にわたる連載も最終回となった。「自分を広げる」の最後は「先生としての自分と本来の自分」だ。

 先生としての生きづらさを考えるときに、思い浮かぶのは「本当の自分はこんなことを言いたくはないのだけれど…」という枕言葉。「仕事だから」と割り切って言わなくてはいけないこと、伝えなくてはいけないことは確かにある。でも、そんな時の言葉には、「自分」を感じることができない。その人の気持ちが乗っていない言葉は、子どもの心に響かない。「建前で言っているよね」と何となく伝わってしまうのだ。

 ボクもこのことで苦しんだ時期がある。

 「本当の自分はこう思ってないんだけどな。あの先生の前だから言っておかないとな」

 「先生としてはこう言わないといけないよな」

 そんなことを続けているうちに、本当の自分を見失いがちになり、本来の自分と先生としての自分が乖離(かいり)し過ぎて、うまく笑えない時期があった。

 ボクは人が成長する仕組みに強い興味がある。だから、自分自身が衰退するようなこの感覚は、何とかしたかった。そうしていろいろなことを学び、自分でも実験しているうちに、見えてきたことがある。

 「先生としての自分」と「本来の自分」の重なる面積を増やしていくと、自分自身が安定してくるということだ。建前で話さず本音で話す。違和感をそのままにせず「なぜこれをやっているんだっけ?」と問い直す。そうやって少しずつ本来の自分に近付けていく。

 2人の自分が共通して行うことの一つに「呼吸」がある。「呼吸」を意図的に扱う瞑想(めいそう)やヨガをすることで、2人の自分が乖離(かいり)し過ぎてしまうときに、スイッチを切り替えることができることも分かった。本来の自分がやりたいことと今の自分の現実とのギャップを捉えるために、振り返りも有効だ。毎朝、自分の願いを確認して、今の事実から気付いたことは深く思考できるようになってきた。

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