【Be the Player~人口6万人のまちからの教育改革~(8)】「未来は自分で創る」子どもの育成② 中学校の実践

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 今回は前回に続き、プロジェクト3の「未来は自分で創る」の実践について紹介します。石川県加賀市では「問いを立て続ける」「教科横断的に探究する」「課題解決する」という3つの軸を持った子どもたちを育成できるよう、小中学校の9年間を通じた系統的なSTEAM教育プログラムの整備を目指していますが、今回は中学校の実践の様子を紹介します。

 中学校ではプログラミングに加え、ホームページの作成や動画制作、3DCADなどデジタルツールの基本的な操作方法を学びます。そして、生徒たちはこれらのデジタルツールを必要に応じて活用し、実社会の課題解決に向けて活動を進めていきます。

 例えば、片山津中学校ではSDGsの切り口から地域の課題を見つけ、その解決策を考える活動を行いました。あるチームは自転車を利用する人の視点から、街灯が少ないために夜は危険なエリアを特定し、そこに街灯を設置する提案を考えました。コスト削減のためにソーラーパネル内蔵の街灯とすることを想定し、提案の際には具体的なイメージが湧きやすくなるよう3DCADでデザインした街灯を3Dプリンターで出力して試作品を作りました。また、電力量の消費を抑えるため、人が近付いたときだけ光るセンサーを取り入れたプログラミングも行いました。

 別のあるチームは地域の特産品である梨が規格外商品として数多く捨てられていることを知り、その有効活用に向けて活動しました。規格外商品を使った商品を開発するのではなく、もっと身近な活動でも自分たちにできることがあると考え、梨を利用したレシピを複数考え、それを載せたホームページを作成しました。そのホームページを梨農家の方やその知り合いの人に知らせることで、家庭内でさまざまな食べ方で梨を楽しんでもらい、規格外商品の消費を増やすことを目指しました。

 これらの活動にはまだ課題もありますが、自分たちが見つけた課題を解決するために自ら作ってみることや行動することで、生徒たちは試行錯誤の経験をします。この経験が、問いを立て続けることや教科横断的に探究することにつながっていくのです。そして何より、「自分たちも社会を良くできる!」という実感をわずかでも得られると考えています。

 小中学校の9年間を通じた系統的なSTEAM教育プログラムは、いよいよ来年度から始まります。現状はまだ試行段階ではありますが、小学校の先行実施校や中学校の様子から児童生徒の可能性を強く感じております。じっくり取り組める機会と創造性を発揮できる環境が用意できれば、児童生徒は教師や大人が思う以上のことを成し遂げます。今、大人や教師に必要なのは、児童生徒の可能性を信じることなのかもしれません。

(プロジェクトマネージャー 寺西望)

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