【子どものケガを減らす(9)】 学校事故を減らす

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 2017年1月13日、福岡県大川市の小学校の校庭でハンドボールゴールが転倒し、小学4年生の男の子が死亡しました。私はその新聞記事を読んで「まだ、こんなことが起こっているのか!」とがくぜんとしました。

 過去には04年1月13日に静岡市の中学校でサッカーゴールが転倒し、中学3年生が死亡する事故が起きていました。文科省からは、09年3月、10年3月、12年7月、13年9月など、毎年のようにサッカーゴールなどの転倒による事故防止の通達が出されてきました。それなのになぜ、同じような事故が起こり続けるのでしょうか。

 「これ以上、同じ事故を起こしてはならない!」と、文科省関係の会議で知り合いになった弁護士の望月浩一郎先生に電話をして、「もうこの状況を放置できない。われわれでやりましょう」と、この問題に取り組むことにしました。

傷害の実態の把握

 日本スポーツ振興センターの災害共済給付のデータを用いて、14年度に発生した負傷・疾病108万8587件から「ゴール」で抽出した2554件を分析したところ、75%(1921件)がサッカーゴール、15%(394件)がバスケットボールゴール、7%(190件)がハンドボールゴールによる傷害でした。サッカーゴールによる傷害は、72%(1385件)が「ゴールに衝突、あるいはゴールやネットにつまずき・引っ掛かり転倒」、15%(281件)が「ゴール運搬、設置準備、片付け時」、9%(170件)が「ぶら下がりや跳び付きによる傷害」でした。「ゴールの転倒による傷害」は29件発生していました。

ゴールの転倒実験

 学校に設置されているサッカーゴールなどの実態調査を行い、学校のサッカーゴールを使用して転倒実験を行いました。ゴール転倒時の挟まれによる衝撃力を計測すると、アルミ製で最大1万8980ニュートン、鉄製で2万9283ニュートンで、どちらも頭蓋骨骨折が発生する値(3500~5000ニュートン)を大きく上回る値でした。また、1人の中学生がぶら下がって揺らすだけで容易に転倒してしまうことも分かりました※。

シンポジウムの開催

 17年8月27日に「これで防げる学校体育・スポーツ事故」というシンポジウムを開催し、予防のための提言を出しました。以後、毎年課題を決めて、組体操、むかで競争、プール見守り、サッカーのヘディング、跳び箱、学校施設などについて検討し、毎回提言を出してきました。23年9月には、これまでの6年間の活動を評価するシンポジウムを行い、『これで防げる! 学校体育・スポーツ事故』(望月浩一郎ら編、中央法規出版)という本を出版しました。

 通達だけで事故を予防することはできません。多職種の関係者が関わり、なぜ傷害が発生したのかを科学的に検討し、具体的な予防策を明らかにする必要があるのです。

外部提供情報集

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