【学級・学校を変える!ポジティブ行動支援(2)】 科学的理論に基づいた支援・指導を実現する

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 ポジティブ行動支援は、「応用行動分析学」という科学的に理論化された学問に基づいています。応用行動分析学では、人のさまざまな現象を「行動」に焦点を当てて考えていきます。この考え方は、ポジティブ行動支援という言葉にも「行動」が含まれているように重要な視点であり、教師にとっても支援を実行する上で非常に分かりやすい視点になります。

 応用行動分析学では、なぜその行動(B:Behavior)をするのかという理由を、行動を行うきっかけや状況である先行事象(A:Antecedence)によって行動が引き出され、行動が繰り返されやすくなる出来事である結果事象(C:Consequence)によって行動が高まると考えます。これは行動の原理と言い、頭文字をとって「ABCフレーム」や「行動随伴性」と呼ばれています(図の①)。

応用行動分析学の行動原則
応用行動分析学の行動原則

 ポジティブ行動支援ではこのABCフレームに基づいて、子どもたちのポジティブな行動をポジティブに引き出し、ポジティブに増やす・高めるという実践です。ABCフレームは行動の原理ですので、その行動がなぜ生じているのかの原因をABCのそれぞれに基づいて考えることができます。

 この考え方はつまり、行動の原因を子ども個人の内的な要因に求めない「障害の社会モデル」を実現するということでもあります。さまざまな発達上・行動上の特性や支援ニーズに対して、往々にして学校現場では「あの子は○○障害だから…」「あの子は家庭環境が…」などと語られてしまい、支援会議などでは議論が行き詰まることがよくあります。このような

 「○○な行動をしている」⇔「○○障害だから」

という論理は循環論と呼ばれ、ただ単に子どもの状態をさまざまな概念で言い換えているだけと言えます。ポジティブ行動支援はそのような論理ではなく、子どもたちの行動が生まれやすい環境を「ABCフレーム」に基づいて図の②のようにつくっていきます※。

 このように考えると、子どもの現象に対してさまざまな支援策を考えることができるのではないでしょうか。ポジティブ行動支援は子どもの現象に対して特定の教育プログラムを提供するものではなく、教師自身がさまざまな教育支援策を考えていくことができるフレームワークなのです。ポジティブ行動支援は支援方法の開発を実現し、教師の成長を促進します。

※大久保賢一『3ステップで行動問題を解決するハンドブック-小・中学校で役立つ応用行動分析学』(学研プラス)より引用

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