東京学芸大学教育学部講師
会議の質は組織の質と言えます。また、会議の質は実践・支援の質を左右します。学校において日常的に行われている会議、うまくいっていますか?終わり時間なき話し合い。話し合っても具体的な方策が出ない。そもそもうまく進行されない。会議に対してこのようなネガティブな印象はないでしょうか。
子どもの行動は授業中も生起し続けています。皆さんは授業中に子どもたちに対してどのくらい声を掛けていますでしょうか。アメリカの研究では、1回の授業で20~30回程度のポジティブな声掛けが、子どもたちの授業中の参加や課題従事に必要であると指摘されています。日本においても、授業中の教師の声掛けが子どもの学習に関する作業量や意欲、さらに内発的な動機付けを高めることが実証されています。
学校教育では、学校教育法に基づいて児童生徒に対して懲戒を加えることができるとされています。特に高校では80%以上の学校で懲戒指導が実施され、別室指導や停学、退学といった指導が行われています。こうした懲戒指導は適切な運用が求められていますが、一部の学校では過度に懲戒に依存したゼロトレランス的な生徒指導が横行していたり、昨今では「指導死」や「スクールハラスメント」などという深刻な人権問題に発展してしまったりする例もあります。
子どもたちのポジティブな行動が生まれやすい環境をつくるためのツールとして、「行動支援計画シート」というものがあります。シートにはSTEP1からSTEP4までの手順が示されており、その手順通りに考えていくことでポジティブ行動支援が実践できるというものです。このシートを用いることによって、子ども主体の取り組みを実現していくことができます。
教師の支援や言葉掛けは、その教師個人の力量やスキルに依拠するのではなく、学校に関わる全ての人が行えることが望まれます。ポジティブ行動支援は、子どものポジティブな行動や教師のポジティブな支援が生まれやすい環境づくりや仕組みづくりを含めた「支援・実践のピラミッド」を整えることを目指すのも大きな特徴です。
ポジティブ行動支援では、応用行動分析学の「ABCフレーム」に基づいて、行動を行うきっかけや状況である先行事象と、行動が繰り返されやすくなるような状況である結果事象を整えていき、ポジティブな行動が生まれやすい環境をつくっていきます。そのための支援として一番多い方法は「子どもへの言葉掛け」ではないでしょうか。
「ちゃんとしなさい!」「なんでそんなことしたの!」「○○できて当たり前!」子どもの問題行動には多くの場合、教師の叱責(しっせき)や注意が伴っています。学級が落ち着かなくなり、問題行動が多くなってくると、そのようなネガティブな教師の言動が増加していきます。そして、それに伴って子どもの問題行動は増えていくこともよくあります。
学校現場での暴力行為・いじめ認知は過去最多を更新し続けています。今回は子どもの問題行動に対して、ポジティブ行動支援ではどのように対応するのかを解説していきます。まず、問題行動を減らそう、止めさせようとする対応は罰的な対応や不適切な指導になりやすい傾向があります。
ポジティブ行動支援は、「応用行動分析学」という科学的に理論化された学問に基づいています。応用行動分析学では、人のさまざまな現象を「行動」に焦点を当てて考えていきます。この考え方は、ポジティブ行動支援という言葉にも「行動」が含まれているように重要な視点であり、教師にとっても支援を実行する上で非常に分かりやすい視点になります。
生徒指導提要には「教師の不適切な指導」の事例が示され、学校現場において教師は「適切な」指導・支援を行うことが厳格に求められています。「ポジティブ行動支援」は、教師の適切な指導・支援の方法や、学校組織全体でそれらを実現するフレームワークを提供します。
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