第8回 支援の5つのポイント

第8回 支援の5つのポイント
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 自閉スペクトラム症(ASD)の人たちへの支援で大切なことについて、イギリスの自閉症協会は「SPELL」というキーワードで紹介しています。これは5つの言葉の頭文字を合わせたもので、「S」はStructure(構造化)、「P」はPositive(肯定的アプローチ)、「E」はEmpathy(共感性)、「L」はLow Arousal(刺激の低減)、「L」はLinks(連携)です。

 ASDの人は「木を見て森を見ない」という認知の特性があるため、目に入る情報や耳に入る情報が多くなるほど、周囲の世界は混とんとしたものになってしまいます。その問題への支援が「構造化」です。例えるなら情報の枝葉をそぎ落して幹を浮かび上がらせる手法で、ASDの支援では最も重要なことの一つです。

 「肯定的なアプローチ」とは、子どもが持っている強みや興味・関心などを把握し、それを生かすことです。近年の発達支援の基本的な枠組みとして「ストレングスベース・アプローチ」が主流になりつつあります。それは子どもの弱い面を特訓して鍛えようとするのでなく、強い面に着目し、それを基盤にして発達や学習を促進するという考え方です。

 「共感性」については前回も書きましたが、ASDの人は定型発達者とは異なる世界の捉え方をしていることがあります。彼らが経験している世界を想像し、歩み寄ってみることが大切です。ASDの子どもたちの興味・関心への理解が、共感的な関係を築く糸口になることもあります。鉄道や恐竜の話など、彼らが興味を持っている話題に合わせてみることなどができるでしょう。

 「刺激の低減」とは感覚の過敏性への対応です。ASDの子どもたちは視覚、聴覚、触覚などが過敏で、落ち着いて学習することが困難なことがあります。騒音、強過ぎる照明、匂いなど、ASDの子どもの集中を妨げる刺激がないかどうか点検し、余計な刺激を取り除くことが必要です。

 最後に「連携」です。ASDの子どもの支援においては、保護者、教師、専門家など関係者が情報や支援方針を共有することが重要です。また、地域社会との連携も大切です。地域の中に同じ特性を持つ子どもたちが集う余暇活動の場があると、ASDの子どもたちにとって自然なコミュニケーションを経験できる良い機会になります。

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