子どもたちのポジティブな行動が生まれやすい環境をつくるためのツールとして、「行動支援計画シート」というものがあります。シートにはSTEP1からSTEP4までの手順が示されており、その手順通りに考えていくことでポジティブ行動支援が実践できるというものです。このシートを用いることによって、子ども主体の取り組みを実現していくことができます。
今回は、私が実際にポジティブ行動支援に基づいて学校全体で取り組んだ「児童会活動によるあいさつ運動」を紹介したいと思います。
「あいさつ運動?うちの学校でもやってるよ」と思われた方も多いのではないでしょうか。ポジティブ行動支援というのは特定の教育プログラムや実践を指すのではなく、実践を効果的・機能的にするフレームワークですので、既存の取り組みでもポジティブ行動支援を生かすことができるのです。
さて、実践では子どもたちに行動の原理やABCフレームについて簡単な説明を行い、行動支援計画シートを作成していきました(図左)。具体的な方法や手順は「児童会活動による学校全体のポジティブ行動支援 : ビジュアル版行動指導計画シートの開発と活用」という論文に示していますので、ぜひご参照ください。
この取り組みの特色は、あいさつ数を集計するためのチケットにあります。チケットといっても、画用紙を正方形(一辺5㌢ほど)に切ったものなのですが、このチケットをあいさつした子どもに渡すことで、あいさつをしたことに対するフィードバックが実現し(後続事象として機能)、さらにそれを見た他の子どものあいさつのきっかけにもなります(先行事象として機能)。その後、子どもが教室に掲示されたポスターにチケットを貼ることで、ポスターが学級でのあいさつを促します(先行事象として機能)。さらに、担任は学級でどれだけあいさつが行われたかについて、チケットの枚数を数えることで集計ができ、学校全体にフィードバックすることが可能となります(後続事象として機能)。
このように、あいさつ運動という「実践」に、チケットとポスターという機能しやすくなる「システム」を導入することで、「データ」の収集も可能となり、結果として全校集会で校長先生にどれだけあいさつが増えたかを発表してもらったり、その成果を示したポスターを校内に掲示したりすることができました(図右)。
既存の取り組みに少しの工夫をすることで、目に見える成果を生み出すことを可能とするのが、ポジティブ行動支援の良さなのです。