第9回 情報を整理して見えるようにすること

第9回 情報を整理して見えるようにすること
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 前回、自閉スペクトラム症(ASD)の子どもへの支援のための5つのポイントのうち、「構造化」を最も重要なものとして挙げました。今回はその点について詳しく説明します。

 ASDの子どもたちは余分な情報をカットし、必要な情報だけを意識に残すような脳の情報処理が得意ではありません。情報があふれた世界は混沌(こんとん)としたものとなり、不安が生じます。情報が多過ぎると何を目印として判断し、行動すべきかが分かりにくくなります。その結果、状況が分からないまま先生の指示に従ったり、周囲の動きをただまねて動いたりすることが多くなってしまいます。

 今何をしていて、次に何をすればよいかが一目で分かるような環境だと、ASDの子どもは自分で判断して自発的に動きやすくなります。そのために学校でできることとしては、まず教室環境の点検が挙げられるでしょう。すでに用の済んだ掲示物などが、黒板やその周囲にないかどうかなどです。また、場面の見通しを持ちやすくするための方法として、その日やその時間のスケジュールを提示すること、作業の手順などを視覚的に示すことも効果的です。

 ASDの子どもは相手に合わせることが苦手ですが、それは授業中に先生の話に注意を向けにくいといった形でも現れます。話された言葉は一瞬で消え、そのときに注意を向けていないと何も残りません。一方、黒板などに書かれた言葉は相手に合わせなくても自分のタイミングで情報を得ることができます。そのため、重要な情報は口頭で伝えるだけでなく書いて伝えること、保護者への連絡など個別対応が必要な場合はメモを渡すことなどが効果的です。

 言葉による表現においても、ASDの子どもに分かりやすく伝えるコツがあります。できるだけ具体的に伝えることです。例えば、作業などの指示をする際に「ちょっとやってみてください」といった伝え方では分かりません。「何分までやってください」と伝える必要があります。また、指示したことが終わったときには次に行うことも伝えると見通しが持ちやすくなります。「○○はこれで終わります。次は○○です。では、始めましょう」などと言います。

 最近は電子機器での情報提示が多くなっていますが、板書の工夫でできることもたくさんあります。授業のユニバーサルデザインという考えも広く知られるようになりました。ASDの子どもに分かりやすい授業は、定型発達の子どもにとっても分かりやすくなるはずです。

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