【独自】教採試験の早期化広がる 24年度は4自治体が5月に

【独自】教採試験の早期化広がる 24年度は4自治体が5月に
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 都道府県、政令市など公立学校の教員人事権を持つ全国の68自治体を対象に、2024年度に実施する教員採用試験の開始予定日を教育新聞が調べたところ、茨城県、静岡県、静岡市、浜松市の4自治体が、23年度より1カ月以上早めた5月中旬に設定するなど、日程の早期化が進んでいることが判明した。教員志願者が全国的に減少する中、教員免許を持っている有望な人材が民間企業などに流れるのを防ごうと、文部科学省は各自治体に日程の前倒しを促しており、これに呼応する動きが広がっていることが明らかになった。

24年度は6月16日を標準日と設定


 大手民間企業の多くが6月までに新卒大学生に対する就職の内々定を出すのに対し、教員採用試験は7月に選考を開始する自治体が多かった。文科省は昨年5月、こうした日程の遅れが教員志願者の減少につながっている可能性があるとみて、24年度の採用試験については6月16日を標準日とし、これを目安として日程をできるだけ早めるよう全国の自治体に要請した。標準日に合わせて実施する自治体の負担軽減を図るため、文科省が全国共通で使える筆記試験の問題を用意する考えも示した。

 こうした国の要請に各自治体がどのような対応を取ったかを確かめるため、教育新聞は1~2月、47都道府県と20政令市、大阪府北部の5市町の教員人事権を持っている「豊能地区教職員人事協議会」の計68自治体を対象にアンケート調査を実施し、全ての自治体から回答を得た。アンケートでは、23年度の選考開始日と24年度の開始予定日(2月末現在)を聞いたほか、24年度の開始予定日について、「6月15日以前」「6月16日」「6月17日以降」の3つのグループに分け、その日程に決めた理由を選択式(複数選択可)で尋ねた。

 回答を集計したところ、23年度の選考開始日は、6月が16自治体、7月が52自治体で、最も早かったのは鳥取県の6月11日だった。

過半数が6月までに試験開始


 これに対し、24年度は静岡県、静岡市、浜松市(いずれも5月11日開始)と茨城県(5月12日開始)の4自治体が5月に選考をスタートさせることが分かった。6月に選考を始める自治体も33に上り、5月と6月を合わせると計36自治体と全体の過半数に達した。7月に選考開始日を設定していたのは30自治体。豊能地区は「2月末時点では採用試験の日程を公表していない」として、24年度の詳しい時期を明らかにしなかった。

 文科省が定めた標準日(6月16日)を基準にして24年度の開始予定日を分類すると、「6月15日以前」が19自治体、「6月16日」が16自治体、「6月17日以降」が31自治体となった。

 開始予定日を「6月15日以前」に設定した自治体にその理由を尋ねたところ、「周辺自治体や地域ブロックでの協議・申し合わせによって決まったため」(10自治体)が最も多く、「民間企業や他の公務員試験も考えている人にも受けてもらうには、6月16日よりも早期に実施する必要があると考えたため」(5自治体)が続いた。また、3自治体は「他の自治体よりも早い日程として、多くの教員志望者に受けてもらうため」と答えており、自治体間での志望者の奪い合いとなっている実態も透けて見える。

 文科省が定めた標準日である「6月16日」を開始予定日とした自治体でも、「周辺自治体や地域ブロックでの協議・申し合わせによって決まったため」(12自治体)という理由を挙げるところが最も多かった。文科省の狙いである「民間企業や他の公務員試験も考えている人にも受けてもらうため」を選んだのは5自治体にとどまった。また、「文科省が用意する共通問題を利用することができ、作問負担が軽減できるため」としたのは北海道、新潟県、札幌市の3自治体だった。

 
 


さまざまな理由で早期化に慎重な自治体も


 一方、開始予定日を「6月17日以降」とした自治体が、日程を早めることに慎重になる背景として、さまざまな理由を挙げた。志願者や教育委員会の負担という観点では、19自治体が「教員採用試験を5~6月に実施した場合、教育実習の時期と重なる可能性があるため」としたほか、13自治体が「試験問題の作成作業を早めることが負担になるため」と答えた。

 また、「日程を早めても、民間企業や他の公務員試験も考えている人へのアピール効果は限定的だと考えられるため」(12自治体)、「日程を早めた場合、内定辞退者も増え、採用数が読みにくくなる恐れがあるため」(6自治体)との回答も一定数を占めており、日程の前倒しによるプラス効果そのものに懐疑的な見方が根強い実態が浮かんだ。

文科省はさらなる前倒しを促す方針


 文科省教育人材政策課は全国的な教員志願者の減少に危機感を強めている。標準日を設けて全国の自治体に対応を促した24年度の取り組みについては「あくまで一里塚」と位置付けており、25年度以降はさらなる早期化に向けた働き掛けを検討しているという。「県庁や市役所などの他の公務員試験と同時期の5月に実施すれば、役所への就職と教員の両方を考えている人が教員採用試験にエントリーするきっかけになるはずだ」と強調する。

 また、日程の前倒しが難しい理由として、教育実習の時期との重複を挙げる自治体が多いことについては「実習時期の分散化を各大学に働き掛けており、今後も引き続き対応を求めていく」としている。

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