第4回 非正規教員を生み出す制度的要因①

第4回 非正規教員を生み出す制度的要因①
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 非正規教員はなぜ増加しているのだろうか。幾つか予想される要因もあるだろう。今回は、主として制度の側面から増加要因について探っていきたい。

 まずは、2000年代以降の教育の地方分権改革に着目する。非正規教員の増加や常態的な任用は、ある決定的な制度改正によって促されたというよりも、幾つかの制度変更が少しずつ積み重なっていく中で、徐々に(気付いたときには)非正規教員の任用が事実上正当化されてきたと表現した方がよいかもしれない。

 その嚆矢(こうし)は、2001年「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」(義務標準法)の改正による、非常勤講師の定数活用条項(いわゆる「定数崩し」)の導入である。これは端的に、常勤の者一人分のポストを分割することで複数の非常勤講師を任用できるようにした制度である。身分・待遇が不安定な非常勤講師の拡大を促す制度改正と言える。

 この後、04年には義務教育費国庫負担制度に総額裁量制が導入された。義務標準法によって算出される教職員数とそれに基づく給与水準の総額を国庫負担した上で、その総額の範囲であれば自治体の判断で教職員数や給与水準の増減を変更することを可能にしたものである。総額裁量制をうまく運用すれば、自治体は主体的かつ柔軟に少人数授業(学級)等を実施できる。その一方で、逼迫(ひっぱく)する地方財政事情を背景に、自治体が「定数崩し」=非常勤講師を多く採用しようとする誘因にもなる諸刃の剣である。

 このような制度状況の中、06年にはその国庫負担割合が縮小(2分の1から3分の1へ)され、ますます自治体の財政負担が増えた。その後、地方公務員の定員削減の影響、教職員定数改善計画の未策定も相まって、非正規教員は増加することになった。「定数崩し」も総額裁量制も当初の目的は、自治体がそれぞれの実情に応じて少人数授業(学級)やティームティーチングを実施できるようにする教育の地方分権にあった。もし、十分な財政保障が約束されていたならば、自治体は教員の非正規化へかじを切ることはなかっただろう。

 なお、20年から地方公務員法改正によって会計年度任用職員制度が始まった。これまでの臨時・非常勤職員の曖昧な任用実態や不安定な待遇を一定程度改善することに寄与したものの、「非正規」で働くことを正当化した制度であるとも言える。もちろん、公立学校教員にも適用される制度であり、今後の運用状況を注視していく必要はある。ただ他方で、教職の専門職性の観点から本制度や教育の地方分権改革の負の側面=非正規教員の増加をどのように受け止めるべきだろうか。今後も継続した議論が求められる。

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