第6回 全ての子どもを支える三段階の心理教育的援助サービス

第6回 全ての子どもを支える三段階の心理教育的援助サービス
【協賛企画】
広 告

 学校心理学では、三段階の心理教育的援助サービスのモデルを提唱しています。この三階建ての支援モデルと心理に強い先生の役割を紹介します(図参照)。

三段階の心理教育的援助サービス(石隈・家近,2021)
三段階の心理教育的援助サービス(石隈・家近,2021)

 一次的援助サービスは全ての子どもの共有する援助ニーズに応じる教育です。安全・安心の学級・学校づくりが、全ての学校教育の基盤になります。SOSの出し方教育など、社会性と情動の学習(ソーシャル・エモーショナル・ラーニング:SEL)が注目されています。一次的援助サービスでは、授業のユニバーサルデザインなどどの子どもも参加できるモデルが参考になります。しかし、「今の学級・学校の子どもたち」の発達の状況やニーズによって、SELや授業の進め方を工夫するなどのローカルデザインも求められます。心理に強い教師は、学級・学校の実態に合わせたSELなどのプログラムの計画への助言や担任とTTとしての授業実施などができます。

 二次的援助サービスは学校生活でつまずいて苦戦している子ども、または苦戦するリスクの高い子ども(例:転校生)など、一部の子どもの援助ニーズに応じる教育です。授業や行事、いじめアンケートなどでSOSを早期発見して、生徒指導部会などで共有し、対応します。転校生、支援を要する家庭の子ども、不登校を経験している子どもなどにも、三者面談などを通して援助することが有効です。心理に強い教師は、子どもの苦戦の早期発見・対応のキーパーソンです。生徒指導部会などで、対応の工夫について具体的な助言ができます。

 三次的援助サービスは長期の欠席、発達障害による困難、いじめ被害など、特定の子どもの特別の援助ニーズに応じる教育です。困難な課題を持つ子どもが、自分の自助資源を生かし、援助資源を活用して発達していくことを援助します。心理に強い教師は生徒指導・教育相談、心身の健康、特別支援教育の専門性も生かして子どもの相談相手になれますし、援助チームのコーディネーターとなることもできます。

 強調したいのは三段階の援助サービスモデルは、一次的援助サービスの土台をしっかり築きながら、必要に応じて二次的援助、三次的援助を積み上げていくことです。発達特性で苦戦する子どもも、一次的援助サービスで満たされる援助ニーズにより、二次的援助、三次的援助で必要な対応が異なってきます。

 同時に、二次的援助や三次的援助で効果的な方法を一次的援助サービスに生かすという、円環的なモデルの構築も大切です。授業のユニバーサルデザインは、特別支援教育の二次的援助、三次的援助が一次的援助サービス(算数・国語などの授業)に生かされ、全ての子どもの授業におけるバリアを低くする試みです。

広 告
広 告