前回は「提案と調整」について述べました。いかに「ハブ」として機能するかを考えました。
そこで今回は「ミドルリーダーに必要な資質」について話を進めようと思います。より良い提案や調整をするための元となるチカラとは何かということです。
結論から申し上げますと、ミドルリーダーに必要な資質は「決断力」、決めるチカラです。しかし、ここで言う決断力は、何かを選ぶ「選択力」ではありません。何を切り捨てるか、どれを除外するか、何をしないかを決めるチカラです。読んで字のごとく「断つことを決める」のです。同じように「断つことが分かる」という意味で、判断力とも言えるでしょう。
何か学校を動かすとき、主任という立場や主担当という立ち位置から先生方にお願いすることがあるはずです。しかし、自分の中で「これだ」と思う方法や手だてがあったとしても、それをそのままストレートに下すことは少ないかもしれません。調整の意識が働くからです。
しかし、調整をしたつもりでもどこかで「しわよせ」が起こっていたり、不都合が生じていたりする場合があります。そのような場合は、切り捨てたもの、除外したこと、しないと決めたことがずれていた可能性があるのです。
もしかしたら、「断つこと」よりも「選ぶこと」を優先してしまったためなのかもしれません。多くのズレは、主任としての責任感から何かを「選ぶこと」に力を注ぎ過ぎていることによって起こると感じます。
それよりも、石橋をたたいて渡るように、リスクを回避するように、NGを洗い出すように、丁寧に「断つこと」を決めていく仕事の方が重要です。それはゲームの「ワニワニパニック」でワニの歯を沈めていくような、「黒ひげ危機一発」でナイフを刺していくような感覚に似ています。そうして見つかったラストの一つこそが、提案に値する選択肢です。
もちろん、最後の一本で「ワニ」はかみ付いてきますし、「黒ひげ」は飛びます。ただ、ノーリスクの提案はミドルとしてふさわしくありません。現状を変える提案、思い切って前例踏襲を断つ提案が必要です。
その結果として、職員の本質的な合意は得られないかもしれません。そのリスクが分かっていて、それでも残した選択肢を「これだ」と決めて進む力がミドルリーダーには必要ではないでしょうか。きっと、そうした葛藤の末に決めることこそ、「責任を果たす」というミドルリーダーの在り方かもしれません。