的確な状況把握と対応を すぐに役立つ回答例

的確な状況把握と対応を すぐに役立つ回答例
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 「このようなことが起きた場合、あなたならどう指導しますか」――。間もなく教採試験本番である。近年は実践力重視ということで、場面指導を行う自治体が少なくない。場面指導の概要、攻略のポイント、具体的な設定・課題に対しての回答例などを示す。示された場面に対する状況把握と的確な対応策の示し方のコツをつかんでもらいたい。

 個人面接で聞かれることは、「大学時代に力を入れたこと」「なぜ、教員になりたいのか」「教員になるために努力していること」など想定できるものが多い。しかし、場面指導ではいきなり具体的な場面、課題を示され、対応を求められる。いま多くの課題を抱える学校現場、子供たちをこの人物に任せていいのか、そのための実践力を備えているのか、などを見取るためである。

 設定・課題・質問内容は、主に4つに大別される。(1)教育内容・教育課題(2)児童生徒対応(3)保護者・地域対応(4)その他・圧迫面接――である。実施方法は、個人面接の中に含んで実施するところが多い。面接官と受験者がロールプレー形式で行う場合もある。面接官が保護者を演じ、「うちの子がいじめられている。学校は何をしているのか。しっかりと対応してほしい」と言って担任を訪ねてくる。受験者は担任になったということで、この保護者への対応をする。面接官とやりとりをするのである。このやりとりの中で受験者の実質的な対応力、表現力などをみるものである。

 回答の主なポイントを以下に挙げておく。

 (1)傾聴、受容、共感を基本とするカウンセリングマインドの立場に立つ。

 (2)想像力を働かせ、示された具体的な場面を動的に想像する。実際に動いている情景を思い浮かべる。

 (3)相手の気持ち(子供、保護者、地域)を大事にして自分の言葉で話す

 (4)緊急対応と平素の対応の両面から考える。

 (5)学校での協力や支援を求めるなど、組織で対応することを忘れない。自分だけで課題を解決するわけではない、と考える。

 (6)「それからどうしますか」「それだけで対応は終わりですか」「ほかに対応は考えられませんか」などと突っ込んでくることを想定して、複数の回答ができるよう考える。

 そこで、実際の学級の場面指導ではどのような回答がいいのか。学級担任をしている現職教員であるなら、どのような対応をするか、3人の小学校教師に同じ問いを示し、回答してもらった。回答は3人3様である。どれが正解ということはない。あえていうならば、いずれも正解といっていいかもしれない。

 場面指導では、まず示された課題の趣旨を瞬時に理解することが大切だ。その問題場面を把握し、背景や原因なども推察することが求められる。そして、課題に対して教師としての考え方、関わり方を示すことが大事である。いま担任をしている現職教師がどのような視点で課題を見て、そこからどのような対応を考えるのかを察してもらいたいのである。

 

問い1 クラスで上履きを隠されてしまった子供がいる。どのように対応するか。

A教諭 隠したのが誰だか分からないなら、全員で探す。「探すのがうまい人がいるといいな」などというと、隠した子が持ってくることもある。全体には絶対にしてはいけないこととして指導し、「何か人に仕返しをしたいくらい嫌なことがあったら、先生や友達に話して一緒に考えよう」と呼び掛ける。隠された子に何か原因があるようなら指導するし、隠した子が分かれば十分注意する。

B教諭 いつからなくなったのか、以前にも同様のことがあったのか、隠された子にできるだけ聞く。これをもとにクラス全員に情報を求め、全員で学校中を探す。加えて、クラスで「人の物を隠すことはいけない」「今後も同じことがあったら、全員で探す」ことを指導する。

C教諭 まず、その子だから隠された、というように他の子から思われないように配慮する。そして、探そうとした子を褒めて認める、見つけた子を褒めて認める、ということをする。隠した子が分かったのなら、「自分がされたら嫌だよね。そういうことは人にもしてはいけない。先生も一緒に謝ってあげるから、謝ろう」と指導する。

 ポイント クラス全体への指導につなげていくことを考えている。犯人を捜すことよりも、正しく判断して行動する力を育てることを第一に対応している。隠した子、隠された子、ともに配慮することが重要。

 

問い2 掃除をさぼる子がいる。どのように対応するか。

A教諭 同じ掃除を担当する班の子から、その子の詳しい様子を聞く。なぜ、掃除をさぼるのか、その子から聞き、真面目に掃除をしないことは周囲に迷惑を掛けていることを言い聞かす。今後は掃除を真面目にやることを、他の子供たちの前で話させる。

B教諭 分担された掃除の箇所につき、仕事の量が多くないか、人数が適切なのかをまず見直す。その上で、改めて分担を決め直し、一人一人の役割をはっきりさせる。例えば、○○君はほうきで掃く、□□さんはモップで拭く、と決めて、確実にやらせるようにする。

C教諭 掃除の担当の場所に行き、教師が一緒に楽しそうに掃除をする。さぼる子には「ここに来て、先生を手伝って」と声を掛け、一緒にやってくれたら「きれいになるねえ」などと褒める。さらに、他に一生懸命掃除している子を見つけ、たくさん褒める。

 ポイント 掃除一つとっても、対応は3人3様である。いずれも教師として、子供たちにどのように関わるかを考えている。その際、子供の目線も大切にしたい。

 

問い3 事あるごとに、子供のことで学級担任に言いに来る保護者がいる。どのように対応するか。

A教諭 クラス内での問題を指摘してくるのであれば、どのようなことがあるのか、まずは丁寧に聞く。なるべく早めに解決して、どのようになったのかを報告して安心させるようにする。保護者が精神的に不安定であると感じた場合は、学年全体で相談し、校長、副校長にも話に入ってもらう。保護者にも不安があるわけだから、話を聞くときは子供のよい点なども話し、不安を取り除くようにする。

B教諭 保護者の言うことを親身に聞く。こちらからは学校での様子を話す。そして、担任としてできることがあれば、それをすること、また、子供の様子をきちんと見ておくことを約束する。家庭の協力が必要なら、学校ではこうするから、家庭ではこのようにしていただきたい、と話し合う。理解してもらえない場合は、校長など管理職から学校としての考えをはなしてもらう。

C教諭 何回来ても、嫌がらずに話を聞く。きちんと話を聞いてくれていると感じてくれれば、来る回数は減ってくる。話し合いのとき、学校における、その子の生き生きとした様子などを話すと保護者は落ち着く。難しい内容のときは、1人で抱え込まない。「校長や学年主任にも話を聞いてもらいましょう。いいアドバイスがあるはず」と促す。

 ポイント 若手教師には最も難しい課題とされる保護者対応。面接でもよく聞かれる。まず、保護者の話をよく聞くことが求められる。また、担任として子供のことをよく見ていることを分からせると保護者は安心する。一番大事なことは課題を全て1人で解決しようと思わないこと。学校は組織で動いていることを忘れずに、連携を心掛ける。

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