ボールが体に当たるととても痛いと感じる子がいます。人の痛さは主観です。先生の「大丈夫だから」という言葉による対応では解決できません。ボールを痛いと感じる子にとって、ドッジボールやサッカーは恐怖の時間でしょう。ボールを使った競技には参加させず、「見学」という選択もあるのかもしれません。
でも、「〇〇すればできるようになる」と考えるのが、特別支援教育であり環境調整だと言えるのではないでしょうか。ボールそのものを当たっても痛くないソフトなボールに変える方法があります。
ドッジボールならソフトフォームボール(トーエイライト)、サッカーならソフトサッカーボール(エバニュー)があります。ソフトフォームボールは、手でつぶせるほど軟らかなスポンジをポリウレタンでコーティングしています。ソフトサッカーボールもポリウレタン素材で軟らかく、蹴る力が弱い子にもお勧めです。
この2つのボールは、筑波大学附属大塚特別支援学校の佐藤義竹先生に教えていただきました。佐藤先生によると、ソフトタイプのボールはトラブル防止にもなるそうです。狙った位置にボールを投げたり蹴ったりすることができないと、周りの子にボールをぶつけてトラブルになってしまうのだそうです。そうしたトラブルが頻発すると、「あの子には参加してほしくない」と言われてしまいます。ソフトタイプのボールは、トラブルを未然に防ぐ役割も果たしてくれるわけです。ただし、当たって痛くなくても相手にぶつけてしまったときには「ごめんなさい」と言うことの大切さも、佐藤先生は子どもに教えています。人間関係のルールを学べる場にもしているわけです。
なお、蹴るタイミングをつかめない子には、転がらないボール「キックルパッド」(ミズノ)もお勧めです。巨大な今川焼型(直径240㍉、高さ85㍉)のパッドを蹴って滑らせることで、蹴る感覚を体得できます。「キックルパッド」で検索してみてください。