第8回 ひとこと日記帳

第8回 ひとこと日記帳
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 発達障害の子の困り事は、3つに分かれるそうです。①入力の困難(見る、聞くなど)②出力の困難(話す、書くなど)③頭の中の整理の困難--です。

 作文を書けない理由の一つに、③が挙げられると思います。遠足の作文を書きたいけど、何をどう書いていいのか分からない。頭の中を整理できない。このような子に使ってもらいたいのが、「ひとこと日記帳」(一般社団法人日本医療福祉教育コミュニケーション協会)です。発達クリニックの小児科医・河野政樹先生が開発したもので、ノートに書かれた幾つかの質問に答えを書いていくうちに、日記や作文が書けるようになります。

ひとこと日記帳 385円(税込)一般社団法人日本医療福祉教育コミュニケーション協会
ひとこと日記帳 385円(税込)一般社団法人日本医療福祉教育コミュニケーション協会

 河野先生は、子どもたちが作文をうまく書けない理由を2つ挙げています。

 1つ目は、日本語の語順です。「楽しかった」「ドキドキした」など遠足や運動会で湧き上がった感情を伝えたくても、日本語は感情や思いが最後にきます。朝起きた時から時系列に書いて、最後に「楽しかったです」で終わる作文はその典型です。その点、英語をはじめとする外国語のほとんどは、主語の次に自分の感情や思いがくると河野先生は言います。伝えたい感情や思いが最後にくる日本語特有の語順が、子どもたちの作文力の妨げになっているというのです。

 2つ目は、字義通りに受け取ってしまう発達障害の子の特性にあるといいます。例えば、「遠足はどうでしたか?」という質問は、「遠足に行ったときの気持ち」を聞いているのですが、そこを汲み取れずに遠足の一部始終を省略することなく書いてしまう子が少なくありません。あるいは、膨大な体験のどこを切り取ったらよいのか分からずに書けなくなってしまう子もいます。

 「ひとこと日記帳」は、子どもたちが作文を書く妨げとなっている語順の問題を、最初にクリアします。「うれしかった」「楽しかった」「悲しかった」「イライラした」などの感情を先に選ぶところから書き始めます。続いて「いつ、どこで、だれと、なにを、どうした」という幾つもの質問項目に答えながら書くことで、頭の中を整理することができます。

 この書き方に慣れてきたら、ひとこと日記帳の手助けなしで書いてみるのもよいかもしれません。何の手だてもなしに、思ったことや感じたことを自由に書きなさいと言われてもなかなか書けるものではありません。

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