第6回 子育てを親だけに押し付けないこと

第6回 子育てを親だけに押し付けないこと
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 「家に子どもを一人置いていくことに罪悪感があるんです」

 そんな声をいただくことが度々あります。

 「子どもが不安定なのに親が放っておくなんて」

 そんな声がどこからともなく飛んでくるような感覚にある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 実際に「親の子育てが間違えているんだ」「親がちゃんと子どもを見ないからこうなるんだ」などの言葉を直接かけられた方もいます。断言します。不登校は親のせいではありません。そもそも子どもの身の回りで起きていることの全てを「親の責任」で片付けることが乱暴だと思います。

 子どもが常に親の管理下にあって、全てを親がコントロールしている環境であれば別ですが、子どもは親の所有物ではありませんし、親もそうしたいとは思っていないはずです。親の見られないところは必ずあるので、全てを「親の責任」と押し付けるのは違うと思うのです。

 さらに言えば、子どもにも一人一人人格があり、意思があります。何かが起きたときに親のせいにするのではなく、子ども自身が自分で責任を持って解決する手だてを考えることの方が、その子のためになるでしょう。

 ただ子どもはまだ人生経験が浅く、何か失敗したときやトラブルが起きたときにどう対処してよいものか分かりません。そうしたときのために、大人の力が必要なのです。親が見ていないときにも、子どもたちの様子を見守ってくれる大人が。

 子育ては親だけの役割ではありません。子どもに関わる全ての人が関係することなのです。私たち関わる大人の一挙手一投足が子どもの人生に影響を与える、そうした認識を持って関わることで親以外の大人にも責任感が生まれます。その結果、親と一緒に子育てをしていく意識、文化が世の中に浸透していってほしいと私は思っています。

 共働き家庭やシングル家庭の増加、地域のつながりの希薄化などが叫ばれてしばらくたちます。そうした中で、子どもに関わる大人の目と手が減るとどうなるでしょうか。子どもたちが困ったとき、周りに助けを求められなくなります。「大人は忙しそうだし、私だけで頑張ろう」「私が我慢すれば誰にも迷惑をかけずにすむ」などと考える癖がついてしまうのです。そうした癖は、そう簡単に抜けることはなく、「なんでも一人で頑張る人」「困った時に周りにSOSを出せない人」になるのです。

 「人は支え合って生きるものだ」と常識のように言われてきましたが、その文化が今、崩れつつあると感じています。親だけに責任を押し付けると、親も「私が頑張らねば」とどんどん孤立していきます。

 今必要なのは「なんでも頼ってね」という周りの大人の姿勢です。それによって、親も子も安心して息を吸うことのできる社会になるのです。

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