生成AIと学びを巡る議論には、大きく3つの可能性があると考えられます。
1つ目の可能性は、生成 AI「で」学ぶモデルです。AIが生成した問題を学習者が解き、正誤判定に応じてさらに追加で問題を出したり、解説を挟んだりしながら学んでいく、いわゆるAIドリルのようなものが考えられるでしょう。
実際、GIGAスクール環境下で各社が開発しているドリル型教材は、似たような特徴を持っています。それぞれの学習範囲に即してトレーニングされたAIモデルが開発されれば、比較的高精度で問題を生成し続けられるでしょう。
とはいえ、ハルシネーション(誤った情報を出してしまう)が起こる可能性をゼロにするのは非常に困難です。最終的に正しいことが学べたかどうかの判断がなければ、教育者としてはAIを使って学ぶことを容認しづらいでしょう。しかし、ただのAIドリルではなく、学習者の文脈を理解してさまざまな解説ができる生成AIは、個別最適な学びの道具として大いに期待することができます。
この問題をどうやって解決すればよいのでしょうか。一つのアイデアとして私が提案したいのは、AI「で」学んだことを他者に発表するプロセスを取り入れることです。自分がAIで学んだ内容をさまざまな形でまとめ、教師や友人に発表することで、間違いに気付くことができたり、学習の理解が進んだりします。さらに、表現をするプロセスにおいて、子どもは多くのことを自ら学びます。ここまでやることによって、生成AI「で」学ぶモデルでも、「学びの自覚化」が促されるのではないでしょうか。
2つ目の可能性は、生成AI「を」学ぶモデルです。生成AIの仕組みや機械学習などについて、コンピューターサイエンス教育の一環として学ぶことが考えられます。
2023年5月に、みんなのコードは千葉県にある印西市立原山小学校の5年生(当時)にAIの授業を行いました。6時間かけて画像認識AI(Teachable Machine)を使った機械学習のプログラミングを体験し、自分たちで作品を作る活動を行った後、生成AIを体験してもらいました。
その結果、子どもたちからは「画像認識AIでも学習したように、AIが全て正しいとは限らない」などの感想が出てきました。生成AIを使う前に、機械学習や生成AIの基礎的な仕組みについて学ぶことは有効だと思われます。一方で、どこまでの範囲を学べば仕組みについて理解したかは、議論の余地が残るでしょう。
3つ目の可能性は、生成AI「と」学ぶモデルです。生成AIは学びの道具として位置付けられ、AIが生成したコンテンツは数ある教材の中の一つとして子どもたちの学びを深める足掛かりとして機能します。また、表現活動や創造的な活動の土台としても生成AIは機能します。
次回以降では生成AIを使った具体的な授業事例が登場しますが、生成AI「と」学ぶ授業の様子も紹介したいと思います。
(特定非営利活動法人みんなのコード 未来の学び探究部 特任研究員 宮島 衣瑛)