初めまして、さいたま市立大砂土東小学校の天野翔太と申します。私はここ数年、「心理的安全性」を軸に学級運営を進めています。X(旧Twitter)を中心に、心理的安全性についての発信も行っています。来春には「心理的安全性×学級運営」についての監修付き単著を刊行予定です。
連載の第1回では、「心理的安全性が学級にもたらすもの」について述べていきます。結論としては、「心理的安全性が高まれば高まるほど、より主体的に活動する学級になる」です。
心理的安全性は、ハーバード大学の組織行動学者であるエイミー・エドモンドソン教授がチームに応用し、
「対人関係のリスクをとっても大丈夫だ、というチームメンバーに共有される信念のこと」
と定義した概念です。そして、Google社が行った「プロジェクトアリストテレス」という調査において、生産性が高い効果的なチームの条件において圧倒的に重要なのが「心理的安全性」と発表し、世に広く知れ渡りました。近年、あらゆる業界の企業でこの概念が注目されており、教育現場でも少しずつ聞かれるようになってきたわけです。
学級においての心理的安全性とは、「自分の考えや意見を自由に言い、失敗を恐れずに挑戦できる環境」のことです。一方で、これまでの学校教育の中で、「心理的安全性」という概念はなかったのでしょうか。読者の皆さまもお気付きの通り、決してそんなことはありません。学校現場では、昔から「安心・安全」を大切にしてきました。これまで先人が積み重ねてきたものを「心理的安全性」の視点で見ることが大切だと考えます。
心理的安全性が高まると、子どもは学習活動に積極的に取り組み、学習効果が向上します。また、子ども同士の協働や助け合いが活発になり、学級のまとまりが強くなります。その結果、主体的に活動する学級になっていきます。
例えば、以下のような主体性がより見られるようになります。
〇授業や行事などへの自発的な参加
〇表現の自由による積極的な自己表現
〇自分たちで問い、自分たちで考え、自分たちで解決する
心理的安全性が高まることによって、子どもたちの主体性は間違いなく引き出されます。大事なことは「リーダーのマインドセット」と「環境設定」です。
本連載では、理論に加えて具体的な実践も紹介していきます。
【プロフィール】
天野翔太(あまの・しょうた) 徳島県鳴門市生まれ。埼玉大学卒業。臨時的任用教員として2年間働いた後、さいたま市教員として採用され16年目。平成30年度さいたま市長期研修教員(算数)。心理的安全性AWARD2023において、小学校学級担任としてシルバーリングを初受賞。以降SNSを中心に、心理的安全性を軸に学びを発信。算数およびICT、道徳の分担執筆本(いずれも明治図書出版)あり。本年度、算数と心理的安全性に関する単著を刊行予定。志算研所属。