私たちが昨年度実施した「生成AI100校プロジェクト」には、全国から多くの学校に参加していただきました。小学校からも60校を超える参加があり、多彩な実践が展開されました。その中から、2つの小学校での事例を紹介します。
1つ目の事例は、東京学芸大学附属竹早小学校の中村亮太先生が国語科の学習で活用した事例です。生成AIに新しいオノマトペを作らせてみたり、子どもたちが自分で作ったオリジナルオノマトペのイメージを想定させたりしました。最初のうちは教師が例を示し、児童が出した意見を生成AIに入力していましたが、全体で応答を待つ時間が生じたり、一部の児童の意見しか反映されなかったりといった状況が生じてしまいました。そこで、「みんなで生成AIコース」を使い、児童一人一人が生成AIとオノマトペに関する対話を進めていったのです。その結果、児童が思い付いたことをすぐに確かめることができ、「思い付かなかったようなことが出てくる」といった声も聞かれました。こうした活動の中から、作ったオノマトペをもとにした詩や物語が次々に生まれていきました。
2つ目の事例は、神奈川県横須賀市立浦賀小学校の府中高助先生が社会科の学習で活用した事例です。まず生成AIを使って地域について調べる活動に取り組んだ結果を共有し、細かく指示することの有効性、事実と異なる回答が出る可能性について理解しました。続いて、既習の産業が情報技術によって便利になった例について、個別の課題を追究する活動に取り組みました。その中で、子どもたちが生成AIとの対話を通して、自らの問いを改善していく姿が見られました。
子どもたちが生成AIを使うと、「楽をしようとするのではないか」「自分の頭で考えなくなるのではないか」という懸念を示されることがあります。しかし、教師の適切な指導の下で使えば、むしろ創造性を広げたり思考を深めたりすることができるのです。そうした体験をした子どもたちは、実感を伴って生成AIの持つ可能性を理解し、より良い使い方を志向していく態度が身に付いていくことでしょう。
今年度もパートナー企業のご支援により、全国の小中高対象に学校数を限定せず無償で「みんなで生成AIコース」の提供を続けられることになりました。ご参加いただいている学校の先生方によって、情報交換をするコミュニティーも生まれています。この機会に、学校教育における生成AI活用の可能性を「みんなで」探っていきませんか?
(特定非営利活動法人みんなのコード 未来の学び探究部 講師・研究開発 竹谷 正明)