第8回 AIとの対話で言語能力を磨く

第8回 AIとの対話で言語能力を磨く
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 今回は、高校での生成AIの活用事例として「言語能力の育成」に関わる授業例をご紹介します。

 まず、「生成AIとのディスカッション」の実践事例です。「校則は必要か」「生成AIを学校教育で利用すべきか」などのテーマを設定し、生徒と生成AIがディスカッションを行いました。テーマの選択や「賛成・反対」の立場は自分たちで決定し、勝敗をつけない簡易的な形式で授業を行いました。生徒たちは事前に生成AIの主張を予想し、どのように反論するかをグループで検討してから、ディベートに臨みました。

 しかし、生徒側の主張に対し、AIは数百字にわたって反論を返し続けてきます。生徒たちは悪戦苦闘しながらも、次第に「論点は一つずつ」「1回につき300字以内で」など、AIへの指示(プロンプト)を工夫しながらディスカッションを進めていきました。授業後、生徒からは「AIは自分にはなかった視点で疑問を投げ掛けてきた」という感想があるなど、自身の視点の広がりを感じていたようです。

生成AIとディスカッションする生徒
生成AIとディスカッションする生徒

 次に「文章表現力の向上」への取り組みです。時事問題のニュースを読み、自身の考えを数百字の文章にまとめます。その後、「足りない視点はないか」「表現は適切か」などについて生成AIと対話しながら、自分の書いた文章を見直します。そして、もう一度自分の主張をまとめ、文章として書き直す作業を継続的に続けていきます。

 これらの授業の共通点は、生成AIを利用しながらもあくまで「生徒自身の考え」を重視している点です。生成AIの回答をそのまま結論とせず、自分と異なる見方や考え方に気付くこと、自分の考えを補強することを目的として利用しています。他者との対話で大切なのは、利己的になることでも、他者に盲従することでもありません。生成AIを用いて対話の内容や自身の考えを振り返る機会を増やすことで、人間同士の対話にも生かせる言語能力の向上につながるのではないでしょうか。

 高校での実践においても、「事実と異なる内容が出力される可能性があること」など、生徒が生成AIの特性を把握した上で実施することが重要です。生成AIの回答をうのみにせず、あくまでも自身の考えを深め、他者の意見を尊重するためのヒントとして捉える姿勢が必要と言えるでしょう。

(特定非営利活動法人みんなのコード 未来の学び探究部 講師・研究開発 永野 直)

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