第10回 生成AIが問い掛ける 教育の現在と未来

第10回 生成AIが問い掛ける 教育の現在と未来
【協賛企画】
広 告

 本連載ではこれまで、生成AIとは何か、生成AIを活用することでどのような授業が可能になるのかなどをご紹介してきました。最終回となる今回は、改めて生成AI時代の教育の在り方について考えていきます。

 まず意識したいのは、「生成AIを使うこと」が目的ではないということです。子どもたちに身に付けさせたい力を考え、それを実現するために生成AIを使うという順序で考えることが大切です。そのためには、教員がある程度生成AIについて学び、実際に試して、どのような学びに活用できそうか考えなければなりません。

 そして、子どもたちに生成AIの仕組みや利便性、リスクを伝える必要もあります。新たな学び方が可能になれば、当然、学習課題などの見直しも求められるでしょう。これまで以上に「結果」だけではなく、創造の過程で意味や価値を創り出す力、探究心などに注目する必要があるかもしれません。

 これを「新たにやらなければならず、負担が増える」と捉えるか、「新たな学びを実現するための、武器が増えるチャンス」と捉えるか。もちろん両側面がありますし、一部の教員だけに負担が集中するという事態は避けなければなりません。しかし、「大変そうだからやらない」と目を背けるのではなく、AI時代を生きる子どもの学びのために、まずは教員が校務などから生成AIを使ってみるなど、できることからチャレンジしてみてほしいと思います。また、管理職や教育委員会の方には、現場の挑戦を妨げることなく、応援してほしいと思います。

 生成AIと、どのように向き合うのか――。今、学校現場が直面するこの問いを通じて本当に考えたいのは「変化の激しい社会を生きる子どもたちの学びはどうあるべきか」です。生成AIの登場によって、以前から学校現場が考えてきたこの命題が、より強調されたと捉えることができるでしょう。

 生成AIに限らず、私たちは今後も「新たなテクノロジーとどのように向き合うか」というテーマに取り組み続けるはずです。その際、テクノロジーを使うか・使わないかという議論を先行させず、子どもたちの創造性を育み発揮できるような学び・評価の在り方、問題が顕在化する前からダイバーシティ&インクルージョンの観点を意識する、といった視点が重要になると考えます。

 テクノロジーを過信せず、正しく恐れつつ、豊かな子どもの学びの実現を目指す取り組みを私たちは今後も応援していきます。(おわり)

(特定非営利活動法人みんなのコード 政策提言部/情報教育研究員 田嶋 美由紀)

広 告
広 告