第6回 概念型探究のデザイン① 鍵を握る「設計者の意図」

第6回 概念型探究のデザイン① 鍵を握る「設計者の意図」
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 前回は、学習コミュニティーの中で概念を形成・拡張することが持つパワーについて触れました。今回と次回は、そのような学習活動をどのようにデザインするかについて見ていきましょう。

 第2回でお伝えしたように、概念型探究には概念型学習のパーツと探究型学習のパーツがありますが、まずは概念型学習のパーツについてです。私はワークショップの中で単元のデザインをする際に、いつも「その単元の学習を通して、学習者にどんなことを感じてほしいですか?」と問い掛けます。仮に、それが教科書通りに展開する単元だったとしても、この問いに対する自分なりの答えを導き出すところから全ては始まります。

 概念型探究や概念型学習において、この設計者の意図が重要な鍵となります。もちろん、意図が独り善がりにならないように気を付けることは重要ですが、この部分の熱量は子どもたちに伝わり、彼らが学習に向かう姿勢に良くも悪くも影響を与えると感じています。

 小学4年生の社会科「地域の発展に尽くした先人」の単元を例に見ていきましょう。この単元は、それぞれの地域で取り扱う先人が違います。小学5年生以降の社会科の内容とは異なり、この単元を通して「知ったこと」は日本各地でバラバラな状況です。私は子どもの頃「玉川兄弟」について学んだのですが、大人になって知り合った人の中には、「『玉川兄弟』なんて聞いたこともない」という方がかなりの割合でいます。

 では、この「玉川兄弟」について学習していくことで、子どもたちに一体何をつかみとってほしいのでしょうか。学習指導要領や指導書の該当箇所を見ると、「発展」や「貢献」という言葉が繰り返し出てきます。この2つのキーワードに焦点を当てて、単元を組み立てるだけで一気に概念型学習のパーツが出来上がってきます。

 「なんだ、そんなことなら、今もやっているよ!」と思われた方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。そうです。実は、概念型学習に近いことはすでに多くの現場で実践されているのです。大きく違う点があるとすれば、それは「玉川兄弟」が「発展」や「貢献」という概念を形成したり拡張したり、さらには子どもたちがこの単元における概念的理解を導き出したりしていく上での一つの事例という位置付けだということです。「玉川兄弟」について学ぶのではなく、「玉川兄弟」を通して「発展」や「貢献」についての理解を構築していくことを求めているのです。

 

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