そもそも「ウェルビーイング」(well-being)とは、身体的・精神的・社会的に良好な状態にあることを意味する概念で、「幸福」と訳されることが多い言葉です。厚労省の資料「健康長寿社会の実現に向けて ~健康・予防元年~」では、「健康とは、肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない」とWHO憲章の言葉が訳されています。
ここ数年は教育現場においても、ウェルビーイングの重要性が認識され始めています。特に、子どもたちがストレスやプレッシャーにさらされる現代社会において、心の健康を維持することが求められています。
また、コロナ禍を経て不登校や長期欠席の児童生徒が増加しました。より良い自分を求めて学校に行かない選択肢をとる子どもたちも増えてきたように感じます。そんな中、ウェルビーイング教育は、子どもたちが自己肯定感を持ち、他者と良好な関係を築き、社会における自己実現を目指す、現代において非常に重要な教育だと言えます。
僕はコロナ禍の学びの中で、慶應義塾大学大学院の前野隆司教授とその奥さまのマドカさんに出会い、前野夫妻の考えに触れ、ウェルビーイングの重要性を強く感じるようになりました。前野教授が提唱する「幸せの四因子」は、ウェルビーイングを考える上で今後、大きな役割を担うと感じています。
具体的に、前野教授が提唱する「幸せの四因子」は「自己実現と成長(やってみよう因子)」「つながりと感謝(ありがとう因子)」「前向きと楽観(なんとかなる因子)」「独立と自分らしさ(ありのままに因子)」の4つの要素で成り立っています。詳しくは前野教授のご著書を参考にしてください。
この「幸せの四因子」は既存のポジティブ心理学の考え方に比べ、分かりやすく立ち返りやすい言葉でまとめられています。僕はこの考え方を「幸せの四因子」の「ありがとう」「ありのままに」「なんとかなる」「やってみよう」の頭文字を取って「ありありなんやっ!」というキャッチフレーズにして教室に広めているところです。
共著『ウェルビーイングの魔法』は前野教授の考えを小学生でも分かるようにまとめた本です。ぜひ一度、手にとって読んでみてください。
次回は、ウェルビーイングな教室づくりに必要な教師の在り方についてお伝えします。教師がどのような視点を持ち、どのように行動することで、子どもたちのウェルビーイングを高めることができるのかを考えていきます。