前回、前々回と、小学4年の社会科の単元を概念型探究にデザインし直すときのポイントをお伝えしました。では、このような学習活動を重ねてきた子どもたちはどのように変わっていくのでしょうか。
まずは、学習に向かう姿勢やマインドセットに大きな変容が見られます。「探究は無限ループだ!」とは、小学3年のある男の子が放った一言です。あることについて分かったと思ったら、それについて次の問いが浮かび、調査活動をすると新たな情報が入手できる。そして、それを整理して何かが見えてきたと思ったら、また新たな問いが浮かび上がる。そんなサイクルを半年間繰り返した子どもたちは、「わが意を得たり!」とばかりに「無限ループ」という言葉に盛り上がりました。
学習単元ですから当然、期間的な終わりは設定されています。しかし、単元の終わりが来ても、探究という学習アプローチはその後も続きます。例えば、ある単元のまとめとして発表会を行ったとしましょう。そのときに、資料の選定や声の大きさなど何かうまくいかないことがあったとします。すると、その単元の発表会を失敗と捉える子も出てくるかもしれません。
しかし、概念型探究ではその発表会を振り返り、次に何を生かすことができるのかについても探究していきます。そうすることで、子どもたち自身が「長期的な視野で捉えると、学びに失敗はない」ということに気付いていきます。これが、概念型探究が重要視している「転移可能なアイデアをつくり出す」ことの一例です。
さらには自分の考えを深め、それを表現することにも慣れていきます。とにかく、ノートやワークシートに書く文章量が格段に増えます。考えることを面倒に思わなくなり、書くことへの抵抗が低くなります。すると、量から質への転換が起こり始めます。「もっと自分の考えていることを適切に表現したい!」「相手に分かるように伝えられるようになりたい!」と、文章構成や表現の工夫など国語科で大事にしていることにも自然と目が向くようになります。
根底には、思考を広げたり深めたりすることの面白さがあるのでしょう。「ねえ、聞いて!こんなこと考えたよ!」と話し合ったり、ノートやワークシートを見せ合ったりする姿が、教室のあちこちで見られるようになります。言語化があまり得意でない子は図式やイラストを使って表現し、それがブームを呼び、表現方法がより多彩になるという好循環も起こります。