第1回 令和の学級づくりへの挑戦

第1回 令和の学級づくりへの挑戦
【協賛企画】
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 初めまして。奈良市の小学校で教員をしている小野領一です。校区からは薬師寺や興福寺の五重塔が見え、日々歴史や文化を感じています。

 最近、従来の教育を否定する風潮に少しモヤモヤした感情を抱いています。日本の教育は全国津々浦々、学力保障や礼儀作法などの道徳教育をはじめ、高い水準を保っています。それは他国にはない強みです。だからこそ、伝統を大切にしながら新しい教育をどうにか取り入れることができないかと考えています。

 現代の学校教育においては、江戸時代末期から明治時代初期のような大きな変革が求められています。しかし、学校現場は社会の急速な変化に追い付いていません。このギャップが広がる中で、従来型の授業や学級づくりでは難しくなっています。

 令和時代の学級づくりで重要なのは、教師が「子どもを教え導く存在」や「コントロールするもの」という考えを手放すことだと考えています。どの子もつまずいたり、参加しにくい場面があったりするのは当たり前です。しかし、多くの教師はそうした場合、無意識に自分の力不足だと感じてしまいます。

 でも実際には、教師一人で全ての子どもを教え導くことはできませんし、教師の思い通りには進みません。反対に、丁寧に教え過ぎることは受動的な子どもを育てることになってしまうかもしれません。子どもたちを無理にコントロールしようとすれば、関係性が悪化することもあるでしょう。

 これからの教師は「教え導く存在」ではなく、子どもの伴走者として自走できる環境を整える「教育環境デザイナー」としての役割が求められます。そうした話をすると、「一斉授業はもう時代遅れなのだろうか」と不安を感じる先生もいるでしょう。しかし、マインドを変えた一斉指導とそうでない一斉指導は似て非なるものです。教師が一方的に知識を伝えるだけではなく、子どもたちの考えを引き出し、つなぎ合わせて思考の精度を高められるような一斉授業を行えばよいと私は思っています。子どもたちが自分の意見を表現して他者の視点を理解することで思考が深まり、高次な学びが実現し、それが子どもたちの創造性を育むタネになると考えています。

 私たちは令和時代の教育の在り方を模索し、実践していく必要があります。本コラムでは具体的な事例を交えながら、令和時代の学級づくりについて解説していきます。何か一つでも令和時代の教育を考えるヒントになれば幸いです。

 

【プロフィール】

小野領一(おの・りょういち) 1984年、奈良県生まれ。近畿大学卒業後、大阪教育大学第二部へ進学し、現在は奈良市立小学校に勤務。問題行動が多い学校での経験から、授業だけでなく信頼関係と人間関係の構築の重要性を痛感し、現職教員として奈良教育大学教職大学院にて学級づくりに関する研究を行った。現在も「困難な学級のマネジメント」や「力量ある教員の指導法」「新しい時代の学級づくり」を研究中。著書に『Neo classroom 学級づくりの新時代』(東洋館出版社)、『学級崩壊崖っぷちでも乗り切れる!頑張らないクラスづくりのコツ』(明治図書出版)などの他、共著多数。

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