これまでの日本の教育は、教師の指示や定められたルールに従わせることを重視してきました。明治時代以降、日本は欧州やアメリカなどの先進国を手本に国づくりを進め、戦後もアメリカをキャッチアップモデルとして、世界有数の先進国に成長しました。しかし、この成功に安住した結果、日本の教育は社会の変化に対応してきませんでした。
最近、「VUCA」という言葉が注目されています。これは、変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)の頭文字を取った言葉で、予測困難な変化が激しい時代を意味します。COVID-19の世界的流行もこのVUCA時代を象徴する出来事です。現在の日本は、少子高齢化、人口減少により「課題先進国」と呼ばれています。今後、デジタル化やAIの進展など、より一層難しい状況に直面することは間違いありません。では、そんな令和時代の子どもたちに必要な力とは一体何でしょうか。
まず、「主体性」の育成です。似た言葉で「自主性」というものがありますが、この2つは異なります。「自主性」は他人が決めたことを自分から進んでやることで、「主体性」は自分で決めて行動することです。これからは、子どもたちが自ら問題を見つけ、解決策を考える力を育む教育へと転換する必要があります。そのために「主体性」の育成が不可欠なのです。
次に、「創造力」です。VUCA時代では既存の知識だけでは対応できない問題がたくさん起こるため、新しいアイデアや視点が重要です。教育現場では、暗記や模倣にとどまらず、創造的に問題解決する力を育むことが必要です。
最後に、「柔軟な思考力」です。固定観念にとらわれず、状況に応じて柔軟に対応する力が求められます。教育現場でも、二者択一ではなく多様な選択肢の中から最善の方法を見つける力を育むことが重要です。
このように、令和時代の子どもたちには、主体性、創造力、柔軟な思考力を育む教育が必要です。しかし、日本の社会システム全体がまだ旧態依然としているのも事実です。さらに、子ども主体の教育を進める中で、子どもたちに他者の気持ちを考え、自身の言動に責任を持つ「自律的な態度」を育んでいるのか、あるいは他人の気持ちを全く考えない「身勝手な態度」をよしとしてしまっているのかを私たちは慎重に見極める必要があります。変化を急ぎ過ぎることが、子どもたち一人一人にとって本当に最善かどうかを冷静に判断することも私たちには求められているのです。
次回以降も、もう少し令和時代の学級づくりについて具体的に考えていきます。