第4回 「深い学び」について 実践編①

第4回 「深い学び」について 実践編①
【協賛企画】
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 「CROWN English Communication Ⅱ」(三省堂)のLesson 7「Why Biomimicry?)では、バイオミミクリーの理念や具体例が、提唱者のジャニン・ベニュス氏(米国)の紹介とともに扱われています。このレッスンの最後に私が設定した言語活動は、英語によるCMの作成・発表でした。

 レッスンは4つのセクションに分かれています。各セクションの内容理解後に行うCM作成に有用な言語材料をインテイクするために、セクション3と4をさまざまな方法で音読させます。CMの内容はLesson7のテーマを踏まえ、山形県にあるSpiberという企業が開発した「MOON PARKA」を紹介するものにしました。「MOON PARKA」とは人工合成クモ糸繊維を使ったパーカーであり、バイオミミクリーをそのまま体現した商品です。これを紹介するCMを作ることが、教科書の内容に沿った発展的な言語活動としてふさわしいと考えました。

MOON PARKA(Spiber社提供)
MOON PARKA(Spiber社提供)

 また、このCM発表を通して、生徒が実社会とつながることができるのではないかという期待もありました。私が「MOON PARKA」のことを知ったのは、朝日新聞の「フロントランナー」という記事(2019年11月2日)です。記事ではSpiber社の代表である関山和秀さんが特集されており、商品開発を通した環境問題解決について挑戦的な内容が書かれていました。(地元の鳥取市の企業が開発した商品を紹介する方が自己関連性の点で理想的ですが、当時はそのような商品が見当たらなかったため、「MOON PARKA」の紹介に切り替えました。)

 CMの作成にあたって、CMの目的・場面・状況を次のようにしました。

「あなたはSpiber社の社員。『MOON PARKA』を英語を使って世界に向けて売り出すためのCM作成を依頼されました。魅力的なプレゼンをしてください。Biomimicryが商品アピールポイントの一つです。」

 また、バイオミミクリーに関連した6つのキーワードと本文中の英文を2つ以上使用する条件を加えることで、教科書で学んだ内容・言語材料を生かせるようにしました。CMは4人グループで作成し、2度の中間発表を経て最終発表の機会を設けました。発表時にパワーポイントを使う指示は出していませんが、グループによっては自主的にパワーポイントを作成し、発表を工夫していました。

 既習内容を関連する新たな製品に結び付け、他者に発表するという過程には、「概念を既有の知識や経験に関連付ける」「証拠をチェックし、結論と関係付ける」という深い学びにつながるポイントが含まれています。

 なお、Spiber社にはCMの優秀作品3編が収められたDVDとその英文原稿を送りました。後日、広報部を通して感謝の電話とメールをいただきました。高校での学習内容が実社会や世界につながり得ることを生徒が感じ取れたのではないかと思います。

 

自然界の生物や生態系から学び、それらの構造や機能、プロセスを模倣して製品・サービスを開発すること。

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