第9回 ウェルビーイングを測り、生かす

第9回 ウェルビーイングを測り、生かす
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 「ウェルビーイングという言葉は抽象的過ぎる」「感覚や感情に依存し過ぎてよく分からない」といった声をよく聞きます。

 確かに、「ウェルビーイング」という言葉は抽象的で捉えづらい側面があります。だからこそ、成果を明確に捉えるための客観的なデータが必要です。適切な指標を用いることで、ウェルビーイング教育の効果を科学的に評価し、改善していくことが可能となります。

 全国学力・学習状況調査の質問紙調査には、子どもたちの学習意欲や自己肯定感、幸福度などを測るための質問が含まれています。これらのデータを継続的に収集・分析することで、ウェルビーイング教育の効果を客観的に評価することができます。

 定量的なデータを収集すること自体は重要ですが、一度きりの評価で終わらせず、継続的にモニタリングすることも大切です。対象は子どもですから、自分自身の実態を客観的に評価することは難しいはずです。大人も1回の調査結果に一喜一憂するのではなく、長期的な視点でデータを追い続け、子どもたちのウェルビーイングの変化や傾向を把握する態度が必要です。「この質問の数値が高いからOK、低いから心配」といったように結果を短絡的に評価するのではなく、それらを状態として捉え、変化を見取ったり心の状態を読み取ったりしていくことが大事です。

 僕は、クラスの子どもたちのウェルビーイングを見える化するために、毎月アンケートを行っています。質問内容は、「最高の毎日を過ごしているか」「自分のことが好きか」「クラスの居心地はよいか」といったものです。そして、これらを集計して、客観的に子どもたちの状態を把握するようにしています。

 もちろん、子どもたちの心の中は日々目まぐるしく変化します。「席替えがある!」「給食で大好きなメニューが出る!」といったとき、彼らのウェルビーイングは爆上がりしますし、「苦手な教科のテストがある…」「友達とけんかをした…」といったときには、ジェットコースターのように気持ちが落ちてしまいます。大事なことは、気持ちの浮き沈みが激しいという子どもの特性を踏まえた上で、客観的なデータと向き合うことです。

 そして、子どもたちは感情のコントロールが上手ではありません。それ故に、ウェルビーイングを高めることを支援してあげる必要があります。客観的なデータに加えて、声のトーンや表情、雰囲気も観察しながら、一人一人の状態を見て、関わってあげることが大切です。

 一人一人の状態を総合的に評価し、長期的な視点でモニタリングながらアプローチし続けていくことが、ウェルビーイング教育には重要であると考えています。

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