第6回 読書における紙とデジタル③ 共存と融合へ

第6回 読書における紙とデジタル③ 共存と融合へ
【協賛企画】
広 告

 紙とデジタルの対立を乗り越えたところに、子どもと読書のどんな新しい関係が見えてくるのでしょうか。本連載の後半では、紙とデジタルの共存、融合によって開かれる新たな可能性と課題について考えていきたいと思います。

 シンプルに考えると、現在はあまりなじみのない「デジタル読書」が普及すれば、単純に絵本・本へアクセスする経路が増えます。「紙の本があれば読める」から「紙かデジタルどちらかがあれば読める」環境になることは、子どもの「本へのアクセシビリティーの格差」解消につながる可能性を秘めています。

 家庭の読書環境の個人差は非常に大きく、本がほとんどない家庭で育つ子どもも数多くいます。公立図書館や書店へのアクセスしやすさも地域によって異なることを考えると、本を手に取る機会にはかなり大きな格差があると考えられます。学校図書館は格差解消につながる重要な役割を担っていますし、「GIGAスクール構想」によって1人1台端末環境が実現した現在は、デジタル図書環境の整備と活用が本へのアクセシビリティー向上に大きく貢献する可能性があります。

 実際、学校・自治体向けの電子書籍読み放題サービス『Yomokka!』(ポプラ社)のような子ども向け電子書籍サービスが、徐々に普及しつつあります。これらサービスがさらに普及、活用されるようになれば、格差の縮小にもつながるはずです。

 さらに、学習障害の子どもなど一部の子どもたちにとっては、デジタルが紙よりも読みやすく、学習しやすいフォーマットであることを示すエビデンスが豊富にあります。例えば、識字障害の子どもたちにとって、電子書籍の読み上げ機能はその理解を大いに助けます。デジタル辞書との連携機能は、言語発達が遅れがちな子どもたちの言語習得を促すことにつながります。デジタル図書環境の充実は、読書のバリアフリー化にも大いに貢献するはずです。

 紙とデジタルによるハイブリッド読書環境の充実は、誰もが読みたいとき、読みたい本に自由にアクセスできるという理想の読書環境を実現するための最も重要な鍵の一つであるように思います。しかし一方で、デジタルメディアは使い方次第で子どもの発達にネガティブな影響を与えかねないことも確かです。

 次回以降は、「両刃の剣」であるデジタルメディアを子どもと一緒にうまく使いこなすための鍵について考えてみましょう。

広 告
広 告