「自己選択」と「自己決定」を重視する教育活動の成果は、すぐには現れにくいものです。一方で教師主導の教育は、短期的には成果が見られることが多いものの、長い目で見ると問題を生じさせることもあります。
私は中学校まで成績が良かったのですが、高校に入ってから急に成績が下がり、学習意欲を失ってしまいました。振り返ってみると、中学校までは先生や親の言うことを守り、決められた道を歩いていましたが、高校でその道がなくなったとき、何をすればよいのか分からなくなったのだと思います。この経験から、「自己選択」と「自己決定」の大切さを痛感しました。
子どもたちに「自己選択」と「自己決定」の力を育むために、私は子どもたち一人一人が夢中になれるような学習課題をデザインし、提示することを意識しています。子どもたちには、気に入った学習課題を「自己選択」してもらいます。課題はロジェ・カイヨワの遊びの4要素(ごっこ遊び、競争、探究、ものづくり)を参考にしてデザインし、提示します。
例えば、3年の国語「とうげ」では、以下のような課題を提示します。
・ごっこ遊び:音読劇、演劇
・ごっこ遊び+ものづくり:ペープサート、人形劇
・競争:音読コンテスト
・競争+ものづくり:クイズ
・探究:他の国の昔話や作者の他の作品を調べる
・ものづくり:視写、場面の描写、登場人物などを折り紙や粘土で制作する
これ以外にも、組み合わせ次第ではいくらでも課題を設けることができるでしょう。これら全ての課題を提示すると混乱するため、教師は要素のバランスを考えて幾つかに絞ります。
子どもたちは慣れてくると、自ら課題を提案するようになってきます。もちろん、デジタルツールの使用も認めます。子どもたちは自分のやり方、自分のペースで、課題に取り組んでいきます。学習する場所も、教室内で自由に選ばせます。時数は課題に取り組む時間と発表の時間を踏まえて、4時間程度にすることが多いです。
以前は、このような授業は教師の負担が大きいと感じていました。でも、「GIGAスクール構想」によりデジタルシフトが進み、教師の負担がずいぶんと減ったように感じています。もちろん、授業以外にも子どもたちの「自己選択」と「自己実現」ができる場面をたくさん設けてあげることも必要です。
今の日本の教育現場は、教師と子どもが疲弊しきっています。だからこそ、教師がほんの少しマインドを変えれば、子どもも教師も楽になるのではないかと考えています。本コラムがその一助となってくれれば、これほどうれしいことはありません。(おわり)