教員採用試験のシーズンになると、その倍率の低下から「公教育は崩壊している」とか「学校はオワコン」などと言われますが、皆さんはどのように捉えているでしょうか。
採用試験の時期をずらしたり、科目数を減らしたりするだけにとどまらず、教員採用試験を大学3年生から受験可能にしたり、試験を複数回実施したりして、何とかして受験者を確保しようとする自治体が増えています。それほどに、教員のなり手不足が深刻化しているということなのでしょう。
実際に学校現場を回っていると、校長先生からは「教員が足りない。どなたか講師をやってくれる人はいないか」と声を掛けられます。また、教室では学級担任の確保ができずに、再任用の先生が勤務時間の関係で午前と午後に分かれ、2人で担任をしており、その学年の学年主任が二十代後半だったりする場合もあります。
教員採用試験の倍率低下や正規教員のなり手不足だけでなく、非正規教員が壊滅的に足りないという状況や、その理由(産休・育休教員の増加、特別支援学級の増加、精神疾患による病気休職者の増加など)については、本紙の2024年2月1日の記事「【2024年版】教員不足の現状と解決策 教育専門メディアが解説」 に詳しいので、そちらをご覧いただきたいと思います。本連載では、教員養成系大学の教員として、学生や院生の指導に関わる一方で、各地の研修会で学校改善の助言などをさせていただいている立場から、教職の魅力向上について私見を述べさせていただきたいと思います。
2000年ごろは、公立学校の採用試験の倍率も10倍を超える自治体が少なくなく、非正規教員の皆さんと話をさせていただくと、採用試験を5回、6回受け続けている方が当たり前にいました。しかし、現在は採用試験の倍率が過去最低を更新中です。ただ、これは本紙も含めさまざまなメディアが分析しているように、新卒受験者が減っているのではなく既卒者、つまり他の業種経験者や再挑戦者が減っているということです。
つまり、新卒者から見た教職の魅力はそれほど変化していないのではないかと思われます。教職に対するネガティブなイメージはニュースバリューもあり、SNSやメディアに載りやすい一方、ポジティブなイメージは、学校現場周辺で口々に語られる性格上、拡散されることは少ないように思われます。
そうした中、本連載では現場で見られ聞かれる教職の魅力の一端をお伝えできればと思っています。学校教育に本当にもう希望はないのか、再考するきっかけになれば幸いです。
【プロフィール】
赤坂真二(あかさか・しんじ) 国立大学法人上越教育大学教授。19年の小学校勤務を経て2008年4月より現所属。学校心理士、ガイダンスカウンセラー・スーパーバイザー、日本学級経営学会共同代表理事、日本授業UD学会理事、 NPO法人全国初等教育研究会JEES理事。著書に『明日も行きたい教室づくり クラス会議で育てる心理的安全性』『指導力のある学級担任がやっているたったひとつのこと』『個別最適な学び×協働的な学びを実現する学級経営』『資質・能力を育てる問題解決型学級経営』など。