第2回 現場の実態を踏まえて考える

第2回 現場の実態を踏まえて考える
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 教職の魅力を再構築・再発見するとき、現場で起きている「望ましくない」現実にもしっかりと正対しておかねばなりません。学校現場では日々、子どもたちの多様な不適切行動・問題行動に向き合い、時には保護者の理不尽とも思えるような要望にも対応を求められます。そうした状況で、「個別最適な学び」や「協働的な学び」「インクルーシブ教育システムの実現」などと言われても、現場の先生方には「絵に描いた餅」のように感じられ、改善に取り組む気にならないのではないでしょうか。

 近年の教育改革の動きを見ていると、求められている理想と現場の実態が乖離(かいり)していて、多忙過ぎる現場が半ば冷めた目で見ているように感じることがあります。教職の魅力を共有しようとして文部科学省が実施した「教師のバトン」プロジェクトに少なからず反発があったのは、「まずは実情を踏まえてほしい」という現場の叫びだったのではないでしょうか。コロナ禍が明けた時期、ある学校の管理職がため息交じりに次のような話をしてくれました。

 GIGAスクール構想のおかげで、タブレット端末などが普及し、確かにこの3年間で、若干の休校期間はあったもののオンライン授業が実施でき、授業がストップするようなことはなくなりました。学習の遅れもほとんどなく、出席停止の子どもたちも、自宅の端末から教室の映像を眺めながら授業に参加していると言います。

 しかし、子どもたちの社会性やコミュニケーション能力の育成は、危機的な状況だそうです。例えば、高学年では、「あいつが先に死ねって言ったのに、なぜ自分は言ってはいけないの?」「言わないままじゃ、負けじゃん」などのやりとりが児童同士のトラブルの際には聞かれ、それがこの学校の文化として「常識的な考え」になっているように見えるとのことです。

 子どもたちが学校でトラブルを起こす、それについて教師が叱る、当然のこととして保護者に連絡をする、すると保護者も子どもを叱る、当該の子どもはストレスを蓄積させ、さらに学校で暴れる…。そんな悪循環が起きているというのです。管理職は、担任の状況を理解しながらも、別の指導法があることを示唆するわけですが、「力で抑える」「悪いことをしたら叱る」という指導法しか知らない担任は、管理職の助言の意図が分からないと言います。その管理職は、こうしたトラブルの連続によって職員室が疲弊していると語ってくれましたが、このようなネガティブな実態を踏まえた上で教職の魅力と向き合うことが大事な視点なのではないでしょうか。

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