私はこれまで、全国の幾つかの公立学校や自治体に関わらせていただき、教育活動の改善にご協力させていただいてきました。教育活動が改善され、子どもの動きが活性化してくると、そこで働く教員の皆さんのチーム力が高まり、元気になるという現象が見られました。今回はそんなある学校の改善事例を紹介することで、教職の魅力を考えるきっかけにしていただければと思います。
名だたる観光地として有名な街の一番大きな小学校での話です。私が最初に関わらせていただいた段階では、「本校は特別な支援を必要とする子どもの割合が多く、幾つかのクラスが荒れています。昨年は、児童の教室からの飛び出しが1日に5件ほどありました。これまで、教科指導を中心に校内研修を進めてきましたが、クラスが混乱していて授業改善まで届きません」との説明を受けました。それから4年、学校の懸命な努力は実を結びます。ある教員の振り返りです。
「4年前に異動してきたときも、先生方はそれぞれ子どもに真剣に対応して一生懸命取り組んでいたが、子どもが落ち着かず、不適応行動を起こす子が多かった。授業にわざと遅れ、友達とのトラブルが絶えず、あちこちでけんかが起こり、教師はその対応に追われて授業どころではなくなり、毎日のようにケース会議や保護者へのクレーム対応に追われていた。しかし、今の研究に取り組むようになってから学校全体が落ち着き、深刻な生徒指導上の問題が少なくなり、不登校が減った。クラス会議(学級活動の時間に実施される生活上の諸問題を解決するための話し合い活動)を集団づくりに取り入れて継続している学年は、まとまりが出て授業態度が落ち着き、学校に適応している子が多い。
クラス会議を通して、ちゃんと子ども同士の関係が育ってきていて、また、担任と子どもとの信頼関係も良好である。低学年の頃は、集団についていくのがやっとで、コミュニケーションが苦手で、誰かの言葉に敏感に反応して「集団がうるさくて嫌」となりがちで、人一倍不適応になりやすい彼らが、クラス、学年の雰囲気がいいので、『先生の前で怒られないようにちゃんとしよう』ではなく、先生がいないときでも子ども集団が協力して動いている」
こちらの学校の職員が一貫して取り組んだのは、学級経営や協働を基盤にした授業づくりによる教室のコミュニケーションの改善でした。クラスの問題や個人の悩みについてその解決策をみんなで話し合うことで、相互支援関係を構築しました。また、その相互支援関係をリソースにして、学習指導においても助け合い、教え合いによる問題解決をしました。子どもの適応感や学力も向上したことから、学校における「つながり」の構築が学校の魅力となる可能性が指摘できます。