前回は、私が関わらせていただいたある小学校の学校改善の事例から、教職の魅力を検討しました。そして、「つながり」の構築によって、学校が魅力的な場所になる可能性に言及しました。
この学校ではどのようにしてつながりをつくったのでしょうか。子ども同士の「つながり」の構築において、中心的な役割を果たしたのが「クラス会議」と呼ばれる学級活動の時間に実施される話し合い活動です。話し合いの議題は、クラス全体に関わることから、個人の悩み事まで多岐にわたります。
高学年のあるクラスでは、一人の女子が悩み事を相談していました。「最近、両親から家業を継いでほしいと折に触れて言われるようになったのだけど、自分には将来やりたいことがあり、どうしたらいいか悩んでいる」とのことです。この悩み事について、サークル状に椅子を並べ、順番に発言していきます。最初に発言したのは男子たちでした。彼女の家業がこの街にとって大事なものであることは子どもたちも理解しているので、「継いだらいい」との意見が出て、他の子もそれに賛同しました。
しかし、ある女子から「家業も大事だけど、自分の夢を諦めない方がいい」との意見が出されると、多くの子どもたちが自分の経験を出しながら、彼女を応援しました。その話し合いの過程で、親には一度自分の気持ちを伝えてみたことなど、彼女の葛藤の詳細が明らかになっていきました。一通り意見が出尽くしたところで、彼女は自らが取り組むべきアクションを選択しました。「もう一度、親に自分の気持ちを伝えてみます」と彼女が言うと、大きな拍手が起こりました。
後日、担任から私に電話がありました。
「彼女、もう一度親御さんに気持ちを伝えたそうです。そうしたら、『自分のやりたいことをやりなさい』と言われたそうです。それで、彼女は自分の将来のための勉強と同時に家業の勉強もすることに決めたそうです。クラスメートの応援が力になったとうれしそうに報告してくれました」
「ワンフォアオール」「オールフォアワン」と言われますが、学校では「ワンフォアオール」は求められるものの、あまり「オールフォアワン」を経験することは少ないのではないでしょうか。この学校では、こうした事実が日々積み重なっていたのではないかと思われます。
この学校の教員のインタビューには、まだ続きがあります。
「私立幼稚園の保護者や先生方から『○○小は、いい学校だと聞いたから通わせたい』との相談が年々増えている。学校の体制がしっかりしてきて、職員の意識が高く、みんなで協力してやろうとする雰囲気がある。超多忙だけど、学校に来たらまた頑張ろうと思えるし、やりがいを感じている」
ある教員の発言ですが、「教職の魅力は、子どもの幸せにみんなで向き合い、サポートできること」と、多くの教員の声を代弁してくれているように思います。