「自己調整学習」についてバリー・J・ジマーマンは「学習者が、メタ認知、動機付け、行動において、自分自身の学習過程に能動的に関与している」学習と説明しています(岡田涼ほか編著、2016)。さらに学習を「予見段階」「遂行段階」「内省段階」の3つの段階で捉えています。
「予見段階」では、課題に対する自分の知識や自己効力感などをモニタリングし、目標を設定します。さらに、学習方法を選択します。「遂行段階」では、選択した学習を展開していく中で、達成度や学習方法を確認したり、うまく学習が進められるように学習方法を調整したりします。「内省段階」では、設定した目標の達成状況を振り返り、自己評価をします。そして、なぜうまくいったのかなど、原因帰属を行うことで達成感や充実感を感じ、その後の学習への「やる気」などにつながっていきます。
それぞれの段階において、自分の学習状況について「メタ認知」していたり、「学習方法」を選択したりしています。「メタ認知」「動機付け(やる気)」「学習方法」の3つの要素が相互に絡み合っています。「メタ認知」には「学習方法」の選択が関わっていたり、その結果「動機付け」につながっていたりします。
「動機付け」と言えば「予見段階」、「メタ認知」と言えば「内省段階」などのイメージがあるかもしれません。しかし、3つの要素全てがどの段階にも関連しています。「予見段階」で自分事の目標設定を行い、学習計画を立てることが、「遂行段階」での学びを充実させ、「内省段階」での効果的な振り返りにつながり。また、振り返りの結果がその後の学習の「予見段階」へと循環的に働いていく特徴があります。
「自己調整学習」は、決して自分一人だけで展開するものではありません。大人でも、何かの目標達成に向けて一人で計画を立て、遂行し、振り返ることは難しいものがあります。そもそも子どもたちの中に、「今日の授業も楽しみ」とやる気いっぱいに授業準備をしている子が何人いるのでしょうか。そのため、知的好奇心を喚起して学習内容に興味を持てるようにしたり、子どもたちが設定した目標の達成に向けて支えたりしながら、価値付けていく教師の存在が大切になります。
次回は、「自己調整学習」を支える教師のマインドセットについて考えていきます。
【参考文献】
自己調整学習研究会監修、岡田涼・中谷素之・伊藤崇達・塚野州一編著(2016)『自ら学び考える子どもを育てる教育の方法と技術』北大路書房