第3回 「自己調整学習」を支える教師のマインドセット

第3回 「自己調整学習」を支える教師のマインドセット
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 子どもたちが学びをコントロールしていくためには、教師のマインドセットの転換が重要です。

 Aくんは考えることは得意ですが、鉛筆で文字を書くとなると「面倒くさい」と学びへの「やる気」を失います。そのため、他の子が書いているときには机に突っ伏しています。これまでの学年では「書きなさいよ」と指導され、教師への信頼感を失うとともに、さらに「やる気」を失っていました。

 確かに、鉛筆で文字を書くことが必要な場面もあります。しかし、他の方法で構わない場面も少なくありません。例えば、国語で意見文を書く学習場面において、Aくんは自分の考えは持っていました。そのため「Aくんは、どう思う?」と尋ねると、自分の意見をしっかりと述べることができます。Aくんはタイピングを得意としていたので、これまで通り手書きでも、タイピング入力でも、子どもたちが選択できるようにしました。するとAくんは、「パソコンを使っていいならできる」と、あっという間に自分の考えをまとめました。そして、「できたよ」と自信満々の様子です。

 こうして選択できるようにしたことは、Aくんだけではなく他の子にとっても、「手書きだと書き直しが大変だけど、パソコンを使うと修正するのが簡単だからより自分の考えが深められる」など、「学びやすさ」につながっていました。Aくんにとっては、「手書き」という方法が大きなバリアになっていたわけです。教師が指定した学習方法で授業を展開する方が、学習状況を把握しやすく、学習をコントロールしやすい側面はあります。しかし、授業は私たち教師のためにあるわけではありません。考えるべきは教師の「教えやすさ」ではなく、学習者である子どもたちの「学びやすさ」です。教師は子どもたちの学びのバリアになっているものを事前に取り除き、子どもたちが設定した目標の達成に向けて学びが展開できるように伴走していくことが大切です。

 自分が選択した学習方法や、自分でコントロールした学びだからこそ、目標を達成したときに「できた」という達成感を得ることができます。こうして得た達成感は、次の学びの「やる気」となっていきます。教師がコントロールしている状況下では、得にくいものがあります。授業の中で教師が「どう教えるか」ではなく、子どもたちが「どう学ぶか」を考える、そうしたマインドセットの転換なくして、子どもたちが自分で学びをコントロールすることは難しいのではないでしょうか。

 次回は、「自己調整学習」の重要な要素である「メタ認知」について考えていきます。

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