第8回 BPSモデルで考える「病気」と「不登校」の関係

第8回 BPSモデルで考える「病気」と「不登校」の関係
【協賛企画】
広 告

 「病気」を理由とする長期欠席が急増中です。小学校では2021年度まで2万人前後で推移していたのが、22年度に約3万2千人、23年度は5万8千人近くになりました。中学校でも直近3年で、2万人台半ばから4万8千人近くにまで増えています。

 22年12月に改訂された「生徒指導提要」を読み直すと、BPSモデルによる不登校児童生徒のアセスメントの例として、生物学的要因の中に「発達特性」と並び「病気」が挙げられています。調査の定義上は「不登校」に「病気」および「経済的理由」による長期欠席は含まれませんが、実際の児童生徒を理解する際には、複数の区分をオーバーラップする可能性も考慮する必要がありそうです。

 例えば、この数年で「起立性調節障害(OD)」の認知度が高まっています。19年に岡山県教育委員会が対応のガイドラインを作成し、21年には当事者の高校生たちが制作した映画『今日も明日も負け犬。』が公開されました。日本小児心身医学会によると、不登校の3~4割が該当するとも言われ、軽症例を含めると小学生で約5%、中学生で約10%の有病率が見込まれています。とても大きな数字です。

 ここで病気と長期欠席(不登校を含む)の関係を想像してみます。①「病気」による長期欠席の中に「不登校」が潜在している可能性②「不登校」の中に「病気」が潜在している可能性③直接の欠席理由ではない「病気」が、心理学的要因および社会的要因を経由して不登校に至っている可能性――の3つのパターンが思い浮かびます。

 ①のパターンは、休み始めに発熱や腹痛などの理由が語られていても、心身の不調の背景が自覚あるいは申告されていないことが想定されます。第3回で取り上げた社会的要因としての「いじめ」が背景に隠れていれば、法的な重大事態にも該当します。

 ②のパターンは、前回取り上げた小児慢性疲労症候群のほか、何となくやる気が出ないといった心理学的要因の背景に甲状腺疾患や化学物質過敏症などが疑われるケース、腹痛が主訴でストレス性と思い込んでいたら後から腫瘍が見つかったケースなど、生物学的要因が本体という可能性です。起立性調節障害もここに入りそうです。

③のパターンは、例えば、アトピー性皮膚炎の症状(生物学的要因)があって、半袖の体育着に抵抗があり、季節や時間割によって学校に行きづらくなるなど、社会的要因(他者の視線)そして心理学的要因(不安)へと連鎖しているようなケースが想定されます。

 第5~7回で取り上げたエピジェネティクスを考慮すると、「バイオ・サイコ・ソーシャル」の因果関係は循環的です。これら3パターンの間を移行するような展開もあり得ると想定した「見立て」が求められています。

広 告
広 告