新潟県佐渡市立赤泊小学校は、「問い続ける、ともに学ぶ、自己を見つめる」を重点目標に据え、2021年度から「p4c」をさまざまな教科指導や学校づくりに活用してきました。同校の6年生に「p4c」の魅力は何かと尋ねると、「自分たちで進めることができること」だと答えてくれました。「子どもだけで問い深めることができる」「先生が場をつながなくても、対話の中で次々と子どもから問いが出てくる」「自分たちでできるから楽しい」と続き、さらには自分たちで進めるコツとして、「積極的に発言する」「話していない人に振る」「よく聞く」「楽しむ」「人も考え方も否定しない」という5つのポイントを挙げてくれました。これらのコツを心掛ければ、自分たちで対話を深めていくことができると、子どもたちは語っていました。
こうした子どもの声を聞くと、「p4c」が理想的な形で学びに生かされているものと推察できます。子どもの主体的な学びを促進することは、「p4c」という教育が本質的に追求していることだからです。「主体的な学び」は、学校教育において共通して掲げられている目標でもありますが、授業づくりの中では、「対話をさせる」や「考えさせる」などの表現が、まだ頻繁に使われています。そうした「〇〇させる」教育から脱却し、子どもたちが主体となる対話を促していくにはどうしたらよいのか、「p4c」ではそのためのさまざまな工夫を考え、対話に取り入れています。
最も基本的なことは、子どもたちの問いから対話を始めることです。考える起点を子どもたちが設定します。また、「コミュニティボール」という毛糸玉を使って対話をすることも、子どもたちが主体となって対話を進めるのに役立っています。ボールを持つ人が話し、次の話者へとつないでいくというルールの下、子どもたちがボールを投げ合いながら対話を紡いでいきます。
さらには、考えを掘り下げていくための手がかりとして、「深く考えるためのツール」があります。WRAITECという7つのアルファベットから成るツールで、それぞれの文字が考えを掘り下げる異なる切り口を示します。例えば、ReasonのRは「理由」、TrueのTは「本当?」というように、対話で語られたことをこのツールを使って掘り下げていきます。
教師は対話のファシリテーターとして、子どもたちの考えを深めるスキルを磨かなければならないと考える人がいます。もちろん、教師が深く考える人であるのに越したことはありませんが、「p4c」で目指すべきことは子どもが自分たちで考えを掘り下げていくことができるように支援することです。そのためにできることは何かを考えていくことが、「p4c」という教育を取り入れていく上で必要となる視点です。